第19話 終焉のエンドファンタジア
せっかく頑張って祝詞(適当)を唱えて十二神を降臨させバハムートくんを封印しようとしたのに、見事に打ち砕いてくれやがった。
こちとらワンパンで倒せるっていうのに、わざわざサービス開始時のプレイヤー達の為を思ってぶち殺さずにいたのに、余計なパワーを発揮しやがって。
と、呑気に思っている場合では、
――――少なくとも周りにはなかった。
封印を弾いた衝撃は半端ではなかったようで、草木は仰け反り自警団は飛ばされないよう地面に伏せた。
いつの間にか空が闇に覆われ、その中空に一回りも二回りも大きくなったバハムートが巨大な翼を広げ、なおかつ身体が赤黒く光り始める。
「…………あれー? これ、ひょっとして、やばい展開??」
何がやばいってこれ、
完全に『旧生エレウテリア』の最後と同じ展開!!
マジレスするとゲームシステム及びゲームバランスに致命的欠陥を生じさせていた『エンファンⅡ』を作り直すためのリニューアルによる強制サービス終了だ。
新たなゲームプロデューサーのYO ・ SHIDA氏主導による新作扱いの『エンドファンタジ・ツヴァイ 新生エレウテリア』が始まるのだが――――
「クルーシブジャンプ!」
すぐさまサブクラスを『槍竜士』に変更し専用スキルを発動、自身の後方に15メートルほどジャンプをし、なおかつ敵対心を下げる。
このアクションは見た目結構格好いいのだが、使い方を間違えると悲惨な目に合う。
例えば円形フィールドで外周が崖とかだと普通に落ちて戦闘不能になる。
が、今回は自警団を救うために後方に下がる必要があった。
動揺して浮き足立つ自警団の前へ華麗に着地。
そして、前にケーニッヒベヒモスの時にNPCを守ったスキルを発動する。
「テンプルラウンド!」
自身後方扇範囲のプレイヤー及びNPC、オブジェクトに対してダメージ無効スキル。
――――なぜこれが必要かって?
バハムートが耳を劈く絶大な咆哮を上げた瞬間、無詠唱魔法の『エクサフレア』が膨大に展開し、全周囲広大なフィールドに次々と着弾、骨をも溶かす爆炎と業火が無尽蔵に世界へ広がる。
この攻撃の激しさは、壮観すぎる光景だ。
多分、見る人が見ればこれこそが『世界の終焉を告げるモノ』に映るだろう。
「こ……、これが、バハムートの力なのか、すげぇ…………」
扇状の薄いヴェールに守られたプリシアが困惑しながら呟いた。
その表情は絶望による恐怖で蒼白である。
まあ、確かにこの惨状を見てしまえば誰しもそう感じるだろう。
暗雲立ちこめる空に浮かぶバハムートが放つ『エクサフレア』は、まるで地球の恐竜たちを絶滅させた隕石の如く、しかもそれが大量に地上に着弾しているのだから。
――――言えない。
きっとこの結果は、バハムートを封印しようと演出してしまった自分のせいってことを、口が裂けても言えない!!
だって『エンファンⅡ』では実際そうしてたし!
「なぜこんなことに……、貴方は何かご存じか?」
プリシアよりも冷静に見える彼女がこちらに問いかけてくるが、何も応えられないし、そもそもあんた何の役柄のNPCだよ。
「その銀色の鎧に、この我々を守る技……、もしかして貴方は、セシリアの報告にあったブロント氏では?」
――――セシリアって誰!?
それに? ブロントってなに??
ん? あれ? このNPCもしかして、クリスティーヌ?
プリシアと同様に死狂禁断縛鎖アマネシアで重要な、一万年も生きている『ギリーヌ人』で今はシ=ユノ大公国の研究機関『アルスク』の代行者じゃなかったっけ?
確か結構、偉い立場にいる人物で大公の代役や商工議会の取り纏めするような人だ。
いや、今はそんなことはどうでもいい!
今はゲームと同じようにバハムートを打ち倒さなければいけない。
その方法はゲームと同じやり方を踏襲したほうが、きっと後続のプレイヤーの為になるだろう。
――――なるのか?
とにかく、砕け散った十二神のエネルギーを吸収しなければ。
両手を広げ、赤黒い世界に漂う青いきらきらしたエネルギーの残滓を集める。
その最中、いよいよバハムートが特大の『極エクサフレア』の詠唱を開始した。
まるでバハムートの頭上に小型の太陽が出現したかのようだった。
熱を帯びた風が太陽に集まる。
どんどんと大きくなるその太陽を、自警団はただただ見詰めることしか出来なかった。
「これから君達を逃す」
プリシアやクリスティーヌに声をかけ、時神パイシーズの力で自警団を時の狭間へと転移をさせる。
「……な、なんだよ、これ!?」
「一体、私達になにを……?」
光の粒子が彼女達を包み込み、その姿を徐々に消していく。
――――舞台は整った。
いよいよ極エクサフレア発動のその時、
十二神の力を吸収した私は――――
『神々の覚醒』を習得しました。
概要 エレウテリア十二神の仲間入りをして半神となる。
効果時間 永続
「やっぱり…………。とうとう私、神々の仲間入りを果たしちゃったよ」
バハムートの極エクサフレアが発動し、こちらに落ちてくる太陽に、
思いっきりジャンプして突っ込んでいく。
膨大な熱量と圧力に抗しながら突き進み、太陽を突破と共にそのエネルギー体をも解体させる。
そして、そのまま――――
燃え上がる鉄拳でバハムートを打ち砕いた。
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