第18話 インフレ祭り
さて困った。
追加ディスクの死狂禁断縛鎖アマネシアで登場して人類を滅ぼそうとしているこのバハムートくんを倒していいものだろうか。
今まで倒してきた
――――しかし、バハムートは違う。
今思い出したが、確か特殊な条件で戦える『バトルフィールド』でなら一戦交えられた。
が、しかし、果たして今の状況がそうといえるのだろうか。
もし、違っていたら、プレイヤーサービス開始の時点で『何か』が狂いそうな気がする。
いや、最早そういう予感しかしない。
でも…………、
ここで戦わないという選択肢もない。
相手は意気昂然と人類を滅ぼそうとしているし、そもそも私を人類悪に指定した時点で戦いの回避は不可能だ。
「…………どうしよう」
今にも襲ってきそうなバハムートを前に閃く。
「あ! 『エンドファンタジアⅡ・新生のエレウテリア』の展開だ!」
実は『エンファンⅡ』にもそれぞれ追加ディスクがあり、二つ目の『新生のエレウテリア』の発表された時に、一つ目が『旧生のエレウテリア』と改名されたのだが、その旧生のエンディング兼新生のオープニングでバハムートを封印しようとする
まあ、見事に失敗して色々と大変なんだけど、それは余りに複雑で長いので割愛する。
「今の私ならちゃんと封印出来るかも」
神々に愛されている身だ。
余裕で『神々~』シリーズを覚えて成功するだろう。
早速、『エンファンⅡ』のエレウテリアを守護する十二神に祈りを捧げよう。
「祈りか…………」
祈る動作って、多分、『ヒーリング』でいいだろう。
ちなみに『ヒーリング』とは『エンファン』世界におけるフィールドでの回復方法だ。
驚くべきことに『エンファン』ではHPMPは自然回復しない。
フィールド上で『ヒーリング』というアクションによってなされる。
回復量は20秒毎にHP+10 MP+12で、以後10秒毎に+1加算される。
まあそうやって回復するのだが、その時の姿勢が種族事に異なる。
概ね祈りを捧げているように見えるけども。
とりま、早速ヒーリング開始する。
でも、多分、これだけでは何も起こらないと思うので、適当に(罰当り)十二神に祝詞を唱えてみる。
「我らが戦神アリエスよ、その槍と青銅の大盾で勝利へ導き給え。月神タウラスよ、月輪を用いて闇を覆い給え。知神ジェミニよ、樫の杖で大いなる道を切り開き給え」
すると、どうだろう。
神々の祝詞を唱える度に、バハムートを囲うように一つずつ天を貫く光の柱が現れるではないか。
「星神キャンサーよ、白絹のベールを持って悪を清い給え。海神アクエリアスよ、大身の銛を用いて荒波を貫き給え。旅神ヴァーゴウよ、櫟の弓で山々を穿ち給え」
神々しい光柱が次々と輝きを放ち、白い稲妻がバハムートを拘束し、その周りを青い壁が覆い出す。
「工神スコピオよ、双頭の鉄槌で真なる痛みを与え給え。破神レオよ、黄銅の杖より放つ流星で衝撃を与えよ。日神カプリコーンよ、黄金の扇で日輪を放ち給え」
そんな中、いきなりシステムログが開き、固有スキル『神々の恩恵』を得たと出る。
って、なんでこんなタイミングで!
『神々の恩恵』 効果 ヒーリング中の回復力上昇
3秒に付きHP10% MP6% TP6%回復する。
また、回復上限に到達しても、上限を突破して回復し続ける。
ちょ、まてまてまてまてまて、今はバハムートをどうにかするようなスキルにしてくれよ!
なんだよ!
それって私のインフレステータスが更にやばいことになるんじゃ!?
ちらりとHPを見れば、
HP 286680と、約20%増加、あ、31万超えた。
自分がどんどんバケモノになっていく。
恐くて他のステータスが見られない。
一刻も早く祝詞を終えなければ!
「商神ライブラよ、天秤を持って明敏を発揮し給え! 地神サジタリウスよ、鋼の大鎌で新緑の息吹を狩り給え!! 時神パイシーズよ、霊銀の大斧を持って時を断裁し給え!!!」
すべての祈りの祝詞を唱え終わった瞬間、十二の光柱が脈動し、バハムートを完全に覆い尽くす。
そして青白い球体となって豪快に圧縮を始めた。
ようやく祈りの状態、ヒーリングを解くことが出来る。
なぜか自分のステータスを更にインフレさせるスキルを覚えてしまったわけで、なんならバハムートよりも自分のほうが世界に対して脅威になるレベルに差し掛かっているんじゃないかと疑ってきてしまう。
「…………人類悪って、実は真理を突いてるとか?」
青い閃光を放ちながらバハムートを包む球体を見詰めながら溜息をつく。
強力な封印をしようとする神々の力で、青白い球体はバハムートを圧縮していった。
このままいけば普通に封印できそうである。
「アレは何だ!? 一体、何が起こってんだ??」
後ろのほうで素っ頓狂な大声が上がった。
振り返ってみれば、プロディガルシア地下壕の自警団リーダー、俺っ子のプリシアが目と口をまん丸にして叫んでいた。
――――説明が面倒だな。
再度の溜息と共に、プリシアに声を掛けようとした瞬間、私の集中力が一瞬だけ途切れてしまい、
バハムートを覆っていた青白い球体が弾け飛んだ。
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