第11話 呼び出しペットが強すぎる件
当面の危機は回避された。
これでプレイヤー探しの旅路に集中できる。
「せっかくだし、もうちょっと色々試してみるか」
先程の合成でアイテム収納を漁っていた時に、ケーニッヒベヒモスを倒したドロップ品があった。
『守りのリング』被ダメージ-10%
プレイヤー間取引不可の指輪装備、超絶レア装備だ。
物理も魔法もカットしてくれるこの性能は、現在装備している『エンファンⅡ』の装備より貴重だ。
なぜかというと『エンファンⅡ』の装備はステータス上昇効果のパラメーターしか付与されていないのだ。
例えば現在装備している指輪。
防御力1 STR+142 VIT+148
これがどれくらい凄いかというと、
『エンファン』世界におけるレベル99上限の平均ステータスは以下、
STR 107
DEX 105
VIT 108
AGI 95
INT 89
MND 94
CHR 97
というように、指輪一つがレベル99のプレイヤーステータスを凌駕する。
この装備を頭、鎧、腰、脚部、足、首輪、耳、腕輪、首輪、指輪に装備すれば凄まじいブーストとなろうが、既にステータスは5桁というインフレを起こしているので、3桁程度のステータス上昇では誤差の誤差だ。
なのでこちらの『エンファン』世界で
なぜ『エンファンⅡ』の装備品にピーキーな付与がされていないのかは『エンファン』を取り巻く悲しい歴史がある。
プレイヤースキル格差及び、
時間ポップのHNM張り込み(社会人には厳しい)、プレイヤー操作を補佐するマクロ設定(覚えれば楽だが初見には厳しい)、サブクラスを設定できてしまうシステム(メインクラスを上回る性能になる)、業者が独占するレア装備の高騰、それを買う為のリアルマネートレード等々。
そんな歴史を経た後に発売された『エンファンⅡ』ではロール完全固定制、装備性能の平均化、入手難易度の低い高性能装備類、プレイヤースキルを求めないアクション覚えゲー、平均二ヶ月で先行者に追いつけるシステム採用した。
結果的にはライトユーザーを多く取り込んだ『エンファンⅡ』は世界中で遊ばれる大ヒットとなったのだ。
「まだプレイヤーがいないとなれば入手のチャンス」
例えステータスインフレしていても他のプレイヤーがいては高性能な装備品をドロップするHNMを気軽に狩れない。
間違いなく怨嗟の対象になる。
それだけは御免だ。
それぐらい(別の意味で)『エンファン』は厳しい世界だったのだ。
だが今だったら関係ない。
――――他人の目がない。
サブクラスを狩猟士に変更し、専用スキルの『広域スキャン』を実施する。
これはエリア内のモンスターすべてを感知するスキルだがプレイヤーは対象外。
モンスターとNPCのみというスキルだ。
目当てを確認しマップ上で捕捉する。
すると視界内にその方向まで矢印が表示された。
「便利だ」
次に用意するのはそこまでいける足。
つまり乗り物だ。
『エンファン』では二足歩行の鳥、通称バードしかいなかったけど、『エンファンⅡ』ではそれこそ様々な種類の乗り物があり、おまけに空も飛べる。
その中から少し考えて『ホルン』を取り出し思いっきり吹くと、
「おおー」
大空の彼方から、ベヒモス(!?)が現れて目の前に降り立った。
険しい目付きにずらりと並んだ牙、重厚で筋肉質で逞しい四肢。
数多の冒険者を畏怖させた巨獣ベヒモス。
それがなんと、近付いてくるなり頬ずりをするではないか。
この図体でやられると鬱陶しいが、心なしか喉の奥がゴロゴロと鳴っているのでなついているっぽいので無下にはできない。
「よーしよしよしよし」
犬にするかのようにわしゃわしゃしてやるとなお一層嬉しそうに尻尾まで降る。
いやいや、じゃれ合う為に呼んだわけではなく、この子には目的地まで飛んでもらいたいのだ。
「さ、行くよ」
そう言ってベヒンモスン(名前のつもり)に跨がると、まるで御主人様の意を汲んだかのように颯爽と飛んだ。
なんで翼もない四足歩行の巨獣が飛ぶかは聞かないでほしい。
そんなものは運営に言ってくれ。
世界観ぶち壊しで飛翔するこの姿は『エンファン』プレイヤーに絶体に見られてはいけないので今回限りの限定使用にする。
「お、いたいた」
目的地付近にいるのはロック鳥のNMだ。
それはでっかい飛べない鳥で、本来は近くにある芋虫どもが巣くうダンジョンを抜けてしか来れない。
だからこのベヒンモスンを呼んだわけで、この鳥が落とすレア装備のストロッターブーツ(移動速度+15%付与 )は今のうちに是が非でも入手しておきたい。
「そういえばこの子を呼べたってことは」
スキルを確認すれば案の定だ。
『神々の福音』異次元より使役できる対象を呼び出せる。また、メインクラスかサブクラスに魔物使いを指定した場合、ペットとして扱える。
「ぶっ壊れスキルじゃん…………」
なぜかって?
じゃあ早速サブを魔物使いにして、攻撃対象をロック鳥にする。
すると、どうだろう。
あんなに可愛く(?)なついていたベヒンモスンが生態系の頂点に返り咲いたかのように豹変し、瞬く間にその豪腕てロック鳥をしばきたおして喉に齧り付き、鈍い音と共に鮮血を辺り飛び散らしてしまう。
おびただしい血が滴り落ち、ついにはバキッと首をへし折った。
ロック鳥の足は暫く痙攣していたが、やがて力尽きて動かなくなる。
ベヒンモスンの無我夢中で咀嚼している様子は完全に閲覧注意だった。
お分かりいただけただろうか?
ペットとして使えばケーニッヒベスモス並に超強いってことが。
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