神風は誰に吹く

誰にも褒めてもらえない英雄は

何処へ行ったのか


それは海辺の景色


敵は去り

戦いは過去になったというに

終わらない


過去の風景は

皆の心に去来する


乗り越えられない困難を

超えてきたつもりだったのに

越えてきたつもりだったのに

何故だろう

闘いの日々


あの時だけだった

希望はそこにあって

手を伸ばす

血塗れの手が

誰のものであったのか

誰にもわからない


掴み損ねた未来の

世界は浜辺に濡れた

真砂を踏みしめる足跡のごとし

誰の目にも明らかに


波に洗われて

消え去ってゆく


海の向こうに去ってゆき

もう二度とは訪れない

災いは

この地に抗えぬ災厄を残した

それは始まり

そして終わりの始まりだった


まだ皆は気づかない

その扉を押し開けたのは

自分たちだったことを

もう引き返せない橋を

もう帰れない道を

それとは気づかずに選んだのだ


戦は去ったのではなく

この地に根を下ろして生い茂る

殺戮の枝葉の影が

この国を覆い尽くす


その日はやってくる


だが恐れるな

震えてもおののきに涙する明日はやってきて

その時こそは

の時が来るのだ

遣ってくる男たちが

新しい日々を引き連れて

この世界を導いてくれるだろう


明けない朝の浜辺に立ち

水平線は二分する

空と海

青い空と蒼い海の

はざまに立つ我らにこそ

未来は訪れる


破滅という明日は

すぐそこにあって気づかない

王と民

蜃気楼の日々は

彼方にあるのか

此方にいる男たち


その刀に錆びる暇はない

刀を抜け

研ぎ澄まされた殺意と

その刀身に移る影は

何者か


武人もののふは武者震いする

その死神こそは

わが身を映し

武蔵野を駆ける

走馬灯


力こそは

力こそが

現世うつしよを駆ける

証となって

サムライは縦横無尽に

獅子吼ししくする


わがままに

力づくの世界を造れ

慙愧に堪えぬは

後悔は無き


「我らの時代」

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