第20話「ミハエルとレーアの初めてのダンス」
――レーア・カイテル視点――
公爵家の馬車に乗り、会場を訪れる。
公爵夫妻であるお父様とお母様は先に会場入りしている。
ミハエル様の身分は男爵なので、会場に入るのは最後の方だ。
ミハエル様は初めてのパーティで少し緊張しているようでした。
「大丈夫ですよ」
私はミハエル様を励ました。
「私たちが仲の良いところを見せつけてあげましょう」
ミハエル様に私の腰に手を回すようにお願いする。
ミハエル様は頬を赤く染め、私の腰に手を回した。
会場に入ると、ミハエルを見た女性達が黄色い声を上げた。
「カイテル公爵家のレーア嬢をエスコートする、黒髪の紳士は一体誰??」
「異国の王族ではないのか?」
「隣国の高位貴族かもしれないぞ」
ミハエル様を見た人々が噂している。
人気デザイナーのフランツ・クラウゼがデザインした、一点物のジュストコールを身にまとい、洗練された身のこなしをする、見目麗しい青年。
ミハエル様を見た女性たちが、黄色い悲鳴を上げたくなる気持ちも分かります。
学生時代のミハエル様には見向きもしなかったくせに。
見た目が良くなったら、ギラギラした視線を向けて来るなんて、本当に浅ましいこと。
あなた方にミハエル様は渡しませんわ。
「ミハエル様、一曲踊りましょう」
「僕は踊りにはまだ自信が」
「心配いりませんわ。
一カ月お母様の特別レッスンに耐えたのでしょう?
なら大丈夫ですわ。
私とミハエル様の仲睦まじい姿を会場にいる全ての人に見せつけたいの」
私は少し強引にミハエル様をダンスに誘った。
ミハエル様は難しいステップにも難なくついてくる。
「お上手ですよ、ミハエル様」
「ありがとうございます」
ミハエル様とそのまま三曲踊った。
ダンスが終わると、会場のあちこちで拍手が起こり歓声が上がった。
何人かの令嬢がミハエル様をダンスに誘いに来たので、牽制しておきましたわ。
ミハエル様は誰にも渡しませんわ。
そのとき、ミハエル様に近づいてくる男がいた。
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――ミハエル・オーベルト・視点――
公爵家の家紋入りの馬車で会場へと向かった。
デビュタントをしていないので、パーティに参加するのはこれが初めてだ。
初めてのパーティでレーア様をエスコートできるなんて夢のようだ。
レーア様は緊張する僕に、
「大丈夫ですよ」
と言ってくれた。
レーア様に腰に手を回すようにお願いされて、心臓がバクバクと音を立てる。
「私たちが仲の良いところを見せつけてあげましょう」
レーア様に促され、僕は緊張しながら彼女の細い腰に手を回した。
レーア様とこんなに密着したのは初めてだ。
会場に入ると、息を呑む声が聞こえた。
会場にいる男性客の目は、漆黒のドレスを身にまとうレーア様に釘付けになっている。
洗練された身のこなし、上品な笑顔、つやつやした髪、美しいお顔、雪のように白い肌、有名デザイナーがデザインしたオートクチュールのドレス。
みんながレーア様に見惚れる理由が分かる。
レーア様はこの世のものとは思えない美しさだもの、まるで女神のようだ。
会場にいる男たちを牽制しながら、カイテル公爵とお義母様を探す。
先に会場入りしているはずなのだが?
「ミハエル様、一曲踊りましょう」
そんなときレーア様にダンスに誘われた。
「僕は踊りにはまだ自信が」
「心配いりませんわ。
一カ月お母様の特別レッスンに耐えたのでしょう?
なら大丈夫ですわ。
私とミハエル様の仲睦まじい姿を会場にいる全ての人に見せつけたいの」
そう言われ、会場の中心に連れて行かれる。
曲に合わせて体を動かしていると、
「お上手ですよ、ミハエル様」レーア様が女神のほほ笑みをたたえ僕のダンスを褒めてくれた。
お義母様の厳しいダンスレッスンに血の涙を流し耐えた甲斐があった。
お義母様、僕にダンスを教えて下さり、ありがとうございます!
「ありがとうございます」
はにかみながら、レーア様にお礼を伝える。
夢のような時間はあっという間に過ぎ、気がつけば三曲踊っていた。
ダンスが終わると、会場から拍手が起きた。
「素晴らしい!」
「一対の人形のようだった!」
知らない人たちに褒められ、照れくさくなってしまう。
レーア様をダンスに誘おうとする男たちを牽制していると、ワイングラスを片手にある男が近づいてきた。
それは懐かしいが、決して会いたくない人物だった。
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