第7話 それではよいシュウマツを

「へぇ。キャバ嬢がトラップだったんだ」

「美人だったからなぁ。コロっと騙されて死んだんだろなぁ」

「じゃあ幸せだったんじゃないですか」

「おま、それいう――!かなぁ?」

「綺麗な女性と性行中に死んだ人間もいたんでしょう?その人にとっては幸せなんじゃないですか?」

「ううん」

 腕を組みながら、紅緒が複雑そうだ。

「どうしました?」

「今日のキャバ嬢さ?オレの知っていた女の顔だったんだ」

「うん」

「昨日の兄さんが最期に話した相手ってどんな顔だった?覚えてる?」

「え?」

「なんで?」

「もしかして知り合いだったのかな、って。知り合いじゃなくっても、兄さんが弱いような。兄さんが勝ちを譲りたくなるような。護りたくなるようなーー。オフクロに似ていたら、とか」

「なんだそれ!」

「怖いこと言うなよ」

「いや、そうだろ?カイトの得意なテトリス、オレのホームグラウンドな歌舞伎町とか!デキすぎてんじゃん!?」

「俺たちを試しているって?」

「遊んでるんでしょうね」

 ここはアリ地獄の巣。もがいたところで出ていけるわけがない。

 もがいても苦しいだけ。見ている方が楽しいだけ。

「天の声もさ?『ここから出られるもんなら出てみろ』って態度だ。無理だってわかってて……」

「「……」」

 紅緒が拳を壁にぶつけたが、誰も何も言わなかった。


 こんな無力な世界があってたまるか!

 俺たちが言いなりになってたまるか!

 

 言葉にできないのは不安だからだ。


 本当に脱出できるのか?

 自分たちの命を握る神のような彼らに敵うと?


 どうしたらいい?

 誰か 誰か 誰か!!! 



「でもさぁ?出る方法あるだろ?」

「どうやって」

 青空がひょうひょうと言うので海斗が睨むように返す。

「一つは噛みつく。あっちが面と向かって殺したくなるように仕向ける。失敗したら外に出るどころか殺されるだろうけど」

「「「……」」」

「もう一つは媚びる。めっちゃ媚びてあっちが助けたくなるよう仕向ける。ただし可愛がられすぎてやっぱりもっと出られなくなるかもな」

「……後者の方がマシか?」

「もう一つ。正直に出たいって言う」

「えぇ?」

「それで出られますか!?」

「わかんね。でもやってみるしかなくない?どうしてそんな悪趣味なんですかって聞いちゃいけない法律もないし。そもそもおれたち、最初から出たいって言ってないじゃん?ゲームやりたくないって」

「あれ?」

「全部おれたち言いなりだった。最初からそこがおかしかったよな?」

「そうだ……俺達は言いなりだった」

「前提がおかしかったんです!ゲームに参加しない、という選択肢があったのに!」

「じゃあいっちょやってみようぜ!」

「「「え?」」」

 青空が天井に向かって声を張り上げた。

「おーい!おーい!おーーーい!!」

『はーい!』

 そんな呼びかけに応じるものかと三人が呆れかけたが、気楽に天の声が答えたものだから!某新喜劇のようにずっこけている。

「おれたちさ?こっから出たいんだけどぉ?」

『えー無理―?♪』

「だよなぁ?じゃあそっち行きたいんだけどぉ?それもダメ?」

『うーん?それならいいのかななぁ?♪』

(うまい!!!)

 三人が驚いているうちに、青空と天の声の交渉が終わった。


「出られるって」

「ソラ、ほんとウォーリー見つけるの上手いよなぁ?」

「かないませんね」

「まったくだ」

 三人が青空の背中を叩いていると、ヴン、と電子音に包まれる!






 あぁ これで いつもの日常に戻れる!!


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