第24話【鑑賞会なんて、なんだか陽キャのイベントみたいじゃないか】
週末。
この日は土日を使って
セレンさんいわく、先日のプールのお礼がしたいと。
ただし、ただのお泊り会ではない。
「今日は朝までアニメ鑑賞会だ」
リビングのソファでくつろいでいる紫音に、俺は言った。
「アニメ鑑賞会です!」
招待された人間以上に喜んでいたのは、セレンさんだった。
「......凄いテンションだね、セレンさん」
「はい! こうしてみんなで徹夜してアニメ鑑賞するのが夢だったので!」
苦笑いを浮かべ、若干引き気味の紫音。
「リビングに布団敷いて照明も落とせば、オールナイト上映の映画館っぽいだろ?」
我が家のリビングの液晶テレビは65インチと無駄にデカイので、こういったイベントには最適なサイズ。
その上音質も良く、テレビシリーズのアニメでも映画のような臨場感が出る。
「セレンさんはどういうアニメが好きなの?」
「基本ジャンルは問わないのですが、最近ハマっているのは日常系でしょうか」
「私はジ〇リ作品かな。特に人間の子供と喋る動物の交流ものが大好き」
紫音はアニメに関してはほとんど詳しくないが、あのアニメーション制作会社の作品だけは俺以上に詳しい。
「
「お前、異世界召喚ものをバカにしてるな?」
「......女子が二人もいるんだし、変な作品見せたら首絞めるから」
「安心しろ。セレンさんがいる手前、その辺りのTPOは厳守する」
異世界ハーレム系、それにセレンさんの地雷ともいえる『あのズバ』だけは死んでも上映しないと誓おう。
疑いの眼差しを向ける紫音を置いて、俺は自室へと向かった。
我が家はケーブルテレビに加入しているので、多種多様なチャンネルが視聴できる。
もちろんその中にはアニメ専門チャンネルというのも幾つか存在している。
俺はそのチャンネルでやっていた、過去に録画した作品達から選定をした。
リビングに戻ると、食欲をそそる、カレーのスパイスの効いたいい匂いが漂ってくる。
日頃の料理修行の成果を見てもらいたいと、今晩の夕食作りはセレンさん一人で受け持っていた。
「夕飯、もう少しで完成しますので」
カウンターキッチンからセレンさんが顔を出す。
「紫音は?」
「お花を摘みに行かれてます」
小皿に盛ったカレーのルーを一口味見をし、セレンさんは微笑んだ。
「その感じだと、満足できる味に仕上がったみたいだね」
「念のため、味見をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「セレンさんが美味しいと感じたのならきっと大丈夫だから」
「お二人の好みの味になっているか心配なもので」
セレンさんの申し出を断れるわけもなく、俺は差し出された小皿に口をつける。
「薄いでしょうか?」
「いや全然。むしろこのくらいの方が紫音も好むかな......あ」
今、自分の犯してしまった行動にはっとして顔が熱くなった。
「ひょっとして晴人さん、間接キスを気にされてます?」
「どうしてそれを!?」
口元に指を当て、にやにやとするセレンさんがなんだか小悪魔に見えてきた。
「母を甘くみてもらっては困ります。料理を教わる時、いつも味見用の小皿を別々に用意していたので、もしやと思っていたら......感が当たりました」
そう。
俺はセレンさんとの間接キスを回避するため、一緒に料理をする際は必ずそのようにして防いでいたのだが、やり方がストレート過ぎたようで、己の策の甘さに苦笑いがこぼれる。
「お互い裸で
「誤解を招くような言い方はやめて。プールで遊んだ、ね」
相手はあのセレンさんだ。
エルフであることを隠せても、神秘と清楚系な美貌が内から溢れる美人で、その辺の女性とわけが違う。
刺激の強いボディタッチと低刺激の間接キス、俺にとって結局はどちらも緊張はさせられるんだよな。
「というわけで、これからは味見用の小皿は一つで充分です。その方が洗い物が少なくすみますし」
「......謀ったな? セレンさん」
「フフ......坊やだからさ」
日常会話で80年代の有名ロボットアニメの名ゼリフを堂々と使う、我が家のエルフにして俺の継母。
二人でプールに行ってからというもの、セレンさんは今まで無自覚にやっていたグイグイ来るのが、時折意識的にやることも増え、俺としてはどうしても意識してしまう。
だって、こちとら思春期真っ只中の男子高校生なんだぜ............。
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