第16話【乳白色の肌に黒ビキニは破壊的によく似合う。】

 プールにやってきた。

 プールはプールでも、ここは南国気分を味わる内装が売りの室内型スパリゾート。

 家族連れやラブラブオーラをまき散らしているカップルといった、いかにもせいを楽しんでいる連中が大挙してやってくる場所は、陰キャな俺には肩身が狭い。


 更衣室で着替えた俺は、同行人を待っていた。

 スパリゾートらしくウォータースライダーは当然、波の起きるプールにビーチを模したプールもある。

 中でもこの施設の目玉は、南国の本場で学んできた女性達によるフラダンスショーが有名で、チームの立ち上げの話が映画化までされるほど大人気。

 まだショーの時間ではないので人もほとんどおらず、落ち着けるスポットのはずなのだが。


「この水着、いかがでしょうか? 着方等おかしくありませんでしょうか?」


 露出多めの漆黒のビキニタイプの水着を着たセレンさんが、恥ずかしそうに上目遣いで視線を向ける。


「.........うん、何の問題もないよ」


 俺の方が問題ありありでいい言葉が浮かんでこない。


 セレンさんがやってきた初日、お風呂上りにほぼ裸の姿で現れた時にはほとんど確認できなかったが、改めてみると腰が細くて脚も長い。

 そして注目すべき部分は胸が洋服越しで見るより豊かでカタチが綺麗。

 水着でいるのが丁度いい快適な室温に調整されているのに、場の雰囲気がそう感じさせてくれなくて、何だか顔が超絶に熱い。


「そうですか、良かった。私、水浴び専用のお洋服を着るのなんて生まれて初めてなもので、少し緊張してしまいますね」


 そうだよな、異世界にプールなんていう娯楽文明は存在しないもんな。

 目の前でもじもじしているこのエルフさんも、俺の母親、継母だなんて誰が想像できようか。

 

「色はセレンさんの好み?」

「はい。でも水着のタイプは紫音しおんさんに選んでいただきました」


 ――あ~、なるほどね..........全ての点と線がここで今全部繋がったわ。


 ここ数日間、セレンさんの様子がおかしかったのはあいつのせいか。


「それにしても、ここは不思議な空間ですね。室内なのに海のように波のある水場があったり......あの太くて大きくて繋がった物体は何でしょうか? 硬そうにも見えますが」


 男性が女性に言われて興奮するワード・ベスト5を網羅したセリフを言うセレンさんの瞳は、俺の左手側にあるワームのような大型遊具に興味津々だ。


「あぁ、ウォータースライダーね」

「それは何をするものなのでしょうか?」

「要するに水の流れる滑り台――主に男女が一緒に乗って遊ぶ乗り物かな」


 滑り台を知らないであろうセレンさんに説明するのはやや骨が折れるが、ある意味正しいと思う。

 公園にある滑り台はともかく、こういう場所にあるウォータースライダーなんか、陽キャの男女を合法的に密着させる為の淫乱な道具としての利用目的が7割だろう(あくまで俺の偏見だ)。


「私、やってみたいです!」


 胸を躍動させて訴えるセレンさんは明らかに興奮していた。

 本物おっ〇いが間近で揺れる衝撃の瞬間に、俺の姿勢は自然と前かがみにおちいる。

 煽情的せんじょうてきな黒ビキニも相まって、刺さる人には刺さり、ある意味で裸以上の破壊力もあり、その潜在力は計り知れない。


「いいけど......あれ結構スピード出るよ?」

「でしたら尚のこと楽しみです! さぁ、早く行きましょう!」

 

 俺の手を引っ張る姿は、まるで初めてプールにやってきた子供のようで、純粋に可愛いと思った。

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