第2話 #過去と異変

俺の名前は黒谷 九曜くろたに くよう35歳の普通のサラリーマンだった。

 その日、俺は海外で活躍している幼馴染で親友の國彦が日本に帰ってくると聞き、休みを取って会いに行っていた。

 

 久々に再会する親友は昔と変わっていなくて、仕事で忙しい毎日だったが、この日は学生の頃のように笑う事ができた。

 飲み屋に向かい、懐かしい昔の話に花が咲き、お互いの仕事の愚痴を言い合っていた。

 まぁ、國彦の場合は仕事については言える事が少ない研究職なので、殆どが俺の愚痴だったが…。


「よぉ〜しぃ〜!。次の店いくよぉ〜九曜〜!!」


「國彦、飲み過ぎじゃなねぇか?」


「せっかくの休暇なんだから〜!。飲まなきゃ損でしょぉぉ〜!!。向こうじゃ、忙しいから飲ん飲んでられないんだも〜ん!!。それにぃ〜九曜じゃないと、こんなに飲めないしさぁー!。だから、次!次!」


「あぁ〜はいはい。いつもの店な〜。」


 國彦に言われた事が少し嬉しく感じたが、そこ反面で國彦が心配になった。

 忙しい仕事だが、2年に一度は日本に帰って来て、こうして大酒を飲んでいる國彦…向こうでは気心の知れた友人がいないのかと聞きたいが、そこは踏み込みすぎだろう。

 だから、こうして溜め込んだガス抜きに付き合う事にしている。

 しかしながら、國彦は酒に強いわけではなく、二、三件はハシゴするが、最終的にはへべれけになり、俺は面倒を見ると言うのがお決まりだった。


「ん?…んもぉ〜!!!なんだよ!!。」


「あぁん?。どうした?」


「九曜、ゴメン…ちょっと仕事の電話。」


「おう。そこで一服してる。」


 スマホ画面の着信を見た國彦は、あからさまに嫌な顔をしながらも、渋々電話に出た。

 俺は電話が終わるまでの間、少し離れた場所でタバコに火をつけた。

 

(最近、タバコ吸える場所も減ったよなぁ〜…ん?。)


 喫煙者の悲しき現実を噛み締めながら、禁煙しようか考えながら、辺りを見渡していた。

 すぐ近くでは海外の言葉で話す國彦が、怒っている様な喋り方で話していて、他の通行人も賑やかに通り過ぎていく。

 そんなまま、ふっと夜空を見上げてると、珍しく星空が見えて、東京でも星空が見えるのかと感心する。

 

 そんな星空に、一つだけ赤く光る星が目に止まった。

 飛行機のランプの光かと思ったが、点滅もせず一向に輝き続けている。

 

「なんだ、あの光?」


 そう呟きながら、じっと赤い星を見つめていると、その光が段々近づいてくる気がした…いや、実際近づいていた。

 輝きが増して、物凄い速さで一直線に俺の方…いや、國彦の方へと向かって来た。


「まずい…國彦!!」


 俺は咥えていたタバコを落としながら、國彦の元へと走った。 

 俺の叫びに振り向いた國彦を突き飛ばしすと、背後からくる赤い光に飲まれ、そして、確信した…俺はここで死ぬのだと。

 





ーーーーーーーー


「うぅ…國彦…あ、あれ?」


 俺は國彦の名を口にして、目を覚ました…もう遥か昔の事何に、なんで今更。


(あれ?…俺って何してたんだっけ?。少し頭がぼんやりする。てか俺、倒れてた?。)


 俺は住処の庭で倒れている。そして、ぼんやりとしていた感覚が収まり、少しずつ思い出してきた。


「そうだ、隔離世界が!?」


 慌てて当たり一帯を見渡した。住んでいる古民家風の屋敷の外見では壊れたところはないし、道場も無事。庭の畑も問題は無さそうだ。

 赤く染まっていた空は、何事もなかった様に真っ青な空に戻っているし、当然ながらヒビも見当たらない。


「とりあえずは平気だけど…森、いや、全体を見た方がいいか。」


 そう思った俺は仙術を発動させる。軽身術《けいしんじゅつ》…仙気を全身に纏わせて、体を羽根の様に軽くする術で、跳ねれば高い木の頂上まで、軽く跳べる事ができる。

 その上で、結界術も使って足場を作り、空高くへと登り始めた…島全体を見渡せる所まで。


「嘘…でしょ?」


 空に上り詰め、雲が浮かぶあたりまで行き、当たり一帯を見渡した…その瞬間、顔が真っ青になり、冷や汗が溢れ出てきた。

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