第15話
いつの間にか夜は明け、スズメがちゅんちゅんと囀っていた。
校舎の時計を見れば朝の4時。
龍之介は硬く閉ざされた校舎をもう一度振り返ると、先を歩く流風を追った。
……あの後、龍之介が気づくと、女の子の幽霊も封印の式もいつのまにか消えていた。
姿が見えなくなっていた黒銀の連中は教室で眠った状態で見つかった。
いずれもぼんやりとしている彼らに流風が笑顔で集団催眠の一種だと適当な説明をした。
(もっとごねるかと思ったのに……)
意外にも彼らはあっさりと帰っていった。なんというかボンヤリと心ここに在らずと言った感じだった。
流風にアイツらお礼参り来るぞ、と言うと、今日のことは夢だと思いますから大丈夫です、笑顔で言われた。
眠りから覚めたような心地よさと、水泳の後のような疲労感の中、恥ずかしい事を沢山言った気がするような龍之介は、なんとも言えない気分のまま、隣を歩く流風をぼんやりと眺めた。
流風は相変わらず何を考えているかわからなくて、龍之介のそんな視線にも全く気づかず、手元の人型の紙を興味深げに眺めていた。
「……なあ、さっきから何見てんの」
「コレですか? あの隠れ鬼の女の子の幽霊を封印した人型ですよ。終わらせてあげないといけませんから」
「……終わらせる?」
「隠れ鬼ですが、特別ルール追加です。鬼を捕まえられるのは逃げ切った人の特権ですから」
流風が人型を龍之介に差し出す。
龍之介は一瞬ポカンとすると、すぐに察した。
「……ああ、そうだな。ずっと追いかけてばかりってのは、寂しいもんだよな」
女の子の幽霊に捕まって地中に引きずりこまれそうになった時、一瞬、この子のかわからないが、寂しさみたいな感情を感じた。
アレが自分の中から生まれたものか、それともこの幽霊の気持ちなのかはわからないが、ただあの時感じた寂しさは自分にも覚えがあるような気がした。
(同情って訳じゃないけど……)
なんだか前より怖くないような気がした。
「名前は鬼ちゃんでお願いします」
「……安直かよ」
フッと笑うと流風もつられて笑った。
「行きますよ、せーのっ」
「「鬼ちゃん、つーかまえた!!」」
.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます