第14話
『そうだ、一応コレも渡しておきます』
『何?』
『幽霊の動きを一時的に止めることの出来るものです』
『……一枚しかないのに、俺が持って良いのか』
不安げに龍之介が尋ねると勿論と流風が笑う。
『そんな不安げな顔をしなくても、大丈夫ですよ』
『……何も言ってねーけど』
『君は頼りになる事で有名方らしいじゃないですか、きっと上手く行きます』
『……ああ。こうなったのも俺の責任もあるから、命かけてやるよ、文字通りな』
震える手を流風に気づかれないように握りしめる龍之介。
『……頼もしいですね。ま、でも何かあったら俺を呼んでください。俺は君の相棒ですから、なんとかします』
(まだ言ってやがる)
『……なら、今なんとかして欲しいんだけどな』
『ははははは、それはちょっと無理です。
でもまあ、本当の本当にどうにもならなかったら、俺をあてにして良いですよ』
『……あてにするって……』
何をどうするんだよ、と流風を見ると、流風が少しだけ胸を張る。
そして、
『俺は、期待に応える男ですから』
半分スケスケになりながら自信満々に行ってのける流風に何だか笑えてくる。
(絶対絶命なのにコイツは何言ってやがるんだ……)
俺のことを本当に頼りにしてるのか?
……期待通りの働きが出来なかったのに。
それとも何があっても自分なら絶対出来るって思ってるのか?
……半分スケスケでやばいくせに。
でもその言い切りがタダの強がりなんかじゃなくて、確固たる物を持っていそうで、なんだか凄く羨ましかった。
『俺は期待に応える男ですよ』
本当かよ。
その言葉が頼もしかった。
(ひょろくてスケスケのくせに)
でも、信じたいと思った。
初めて思ってしまった。
だから……
残ってた力を振り絞り、腕を勢いよく振り上げ、お札を掴む。
「!?」
そして勢いを落とさぬまま、口を塞いでいた手目掛けてお札を叩きつけた。
口を塞いでいた手がそのままの形のままクタリと下に落ちる。
(今だ……!)
「は……、た、助けて!! さいほんひ!!!」
言いかけた途中で、すぐさま他の手がまとわりつく。
(くそっ、やっぱダメなのか……?!)
その時、
「さいほんひではなく西園寺ですよ、鬼塚君」
「!!」
何処からともなく現れた流風が、龍之介に絡み付いている指をはがす。
「……よく頑張りましたね」
そして、そのまま女の子の幽霊がくっついたままの龍之介を腕を引っ張り式の中に引き入れる。
何処にそんな力があったんだろうか、と龍之介が考える間もなかった。
式の中に入った途端、辺りが光で何も見えなくなる。
「うわっ!!」
眩しさで目を瞑る。
「ぁあああぁあああ!!!!!」
断末魔の様な声が聞こえて、不意に身体が軽くなった。
相変わらず何も見えない視界。
掴まれた腕の中にある物を無我夢中で抱きしめた。
頭上で慈しむような、それでいて軽くて、ちょっと変な、今日何回も聞いた笑い声が、聞こえた気がした。
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