第11話





「……結論から言います。のろわれました」


「はぁ?!」


「君を助けるのではなく、君に助けてもらわないといけなくなってしまいました」


「?! おまっ、さっき俺が守るとか言ったくせに、秒で嘘つくなよ!」



ちょっとグラついた俺の気持ちを返せと龍之介は思った。



「いやはや面目ない、ははははは」


「何笑ってんだテメェ! そうだ、お前それ大丈夫なのか? 何か顔舐められてただろ?!」


「ああ、今の所は平気です。ちょっと透けてるくらいです」


「本当だ……」



幽霊のあまりのビジュアルと行動に気を取られていたが、流風の姿が半透明になっているあ。

というか、それを平気って言うのか。



「あんまり長い時間スケスケは良くないですけどね。まあ、一応妖祓いの名家ですので大丈夫です」



よくわかんない理論だが、どうやら今の所大丈夫らしい。一先ず安心する龍之介。



「……てかあれなんだよ?! 首伸びて顔舐めるって変態幽霊か?!」


「変態かどうかはわかりませんが、アレこそが怪談の発生源であり、俺達がここに来た目的です」


「あの隠れ鬼のか?!」


「ええ、どうやら意図せず怪談を再現してしまい、それが呼び水になって彼女に大きく力を与えてしまったようですね」


「怪談の再現って、別に何もしてなくね?」


「隠れ鬼ですよ。しちゃいましたね、俺達」



流風の言葉に行動を振り返る。


黒銀の奴らが龍之介達を探し、龍之介達は逃げながらこの旧トイレに隠れた。



「ほ、本当だ……」


「本当なら俺達で呼び出して、君に霊が群がった隙に祓うつもりでしたが、まさかこんな形で不意をつかれるとは」


「お前サラッと何言ってやがる……つか、何で俺だけ助かったんだ?」


「推測になりますが、分かったことがあります。君は隠れ鬼のルールを知ってますか?」


「隠れてるのを見つけて捕まえる、だろ?」


「そうです。厳密には名前を呼んで相手に触れる。恐らくポイントは名前でしょう」


「名前……」


「あの幽霊は相手の名前を知らないと捕まえる事が出来ないんだと思います」


「俺が君の名を極力呼ばないようにしていたのと、変態君が途中から君を名前でなく、クソ野郎と呼んでたのが幸いしたようです」


それってつまり。


「……お前が捕まったのって、もしかしなくても俺のせいか?」


「ははははは、まさか君が俺の名前を呼ぶとは予想外でした」


「……マジかよ……悪い、本当、マジで」


まさか自分のせいで流風がこんな目に合うとは思わず言葉が上手く出てこない。

しかし流風はこれまでと変わらぬ様子で話し続ける。


「いえ、君を責めてる訳ではありません。ですが、君1人でやってもらわなきゃいけなくなりました」


(怖いとかそんなん言ってる場合じゃねぇな……)


「……俺は何をすれば良い?」


「あの幽霊を弱体化させたいです。それには封印の式を踏ませる必要があるので、君にはその式まで誘い込んでほしいです」


「誘き寄せるって事か?」


「ええ。手筈としては、まず校内で君の名前を彼女に大声で知らせます。恐らく君の名を知った彼女は物凄い勢いで君を追いかけてくるでしょう。ですので、捕まらないよう頑張って校庭まで走って来てください。その隙に俺が封印の式を書いておきます」


「……わ、わかった。走るのは得意だから任せろ」


龍之介が顔面蒼白になりながらもグッと拳を握る。チグハグな行動が強がりだと誰が見てもわかっていたが、流風は何も言わなかった。


「……頼もしいですね、流石俺の相棒です」


「相棒ではない……」


「ですが気をつけてください。一般人で霊力の強い君が捕まったらどうなるか……」


「ど、どうなるんだよ」


誤魔化すようにニコッと流風が笑った。




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