第2話


「……か、カッコいい〜」


「女子は近づくなよ、だってー男らしい〜!」



その後、龍之介が出ていった教室はワイワイと賑やかさを取り戻した。



「顔だけじゃなくて喧嘩も強いし、良いな〜付き合って欲しい〜!」


きゃいきゃいと盛り上がる女子と対照的に男子は実に面白くないという雰囲気だ。


「さっきの、なんだよ、あれ感じわりーな」


「ちょっと喧嘩強くて女にモテるからってサ……」


「おう、だいたい男女平等だってのに何で女子だけなんだ。だいたいうちの女子はその辺の男より強いってのに……」


「おいコラ男子、何か言ったか」


「な、なんでもありません……! って何ぼーっとしてんだ佐藤」


「アレか? 至近距離でメンチ切られてフリーズしちゃったか?」



佐藤がフルフルと首を横に振る。どうやら違うらしい。何故だか若干顔が惚けている。



「龍之介……良い匂いした……何かこうさわやかなシャンプーっていうか綺麗な感じの匂い……」


「てめっ何気色ワリー事言ってんだ!」


「そーよ!! 佐藤のくせに龍之介君の匂い嗅いでんじゃないわよ!!」



教室はぎゃーぎゃーとより一層盛り上がっていた。






「……りゅうのすけ君?って人気あるんですね?」


それまで我関せずと自席で本を読んでいた男子生徒、西園寺流風が前の席の女子に尋ねる。


「あ、そっか。流風君転校してきたばっかで知らないよね」


「近寄り難いから、隠れ好きな子が多いって感じかな」


「キレイめの流風君とは違ったタイプのイケメンだよね〜」


話してるうちに集まって来た女子達が流風を囲む。


「あはは、恐縮です」


流風がサラリと返す。


「喧嘩強いとか昭和かよって思ったけど、いざ見ちゃうとカッコ良いっていうかね」


「喧嘩ですか?」


「ほら、この辺田舎特有の長閑ってよりは、ヤンキー的治安の悪さあるじゃない?」


「で、ナンパとかカツアゲとか、たまにあるんだけど、龍之介に助けてもらった子多いんだよ」


「ウチも前絡まれてるの助けてもらったー! で、龍の事狙ってんだけどさ、遊び誘ってもいっつもバイト忙しいって断られちゃうんだよね」


「そうなの? こないだB組の女子が他校のキモ男にストーカーされてるとかで送り迎えしてもらってんの見たけど」


「うぞ!! 先週も誘ったのに! ズルくない?! でもそこが良い!」


テンションMAXな女子が流風の机をバンバンと叩く。


「……なるほど、随分頼もしい方なんですね。察するに彼は一匹狼っぽいですが……逆恨みとかは大丈夫なんでしょうか」


「うーん、龍之介なら大丈夫じゃない? 頼りがいあるし」


「だね。なんていうか何でも平気そう」


「怖いものとか無さそうだよね」


「怖いもの、ですか……」



5限授業の始まりの鐘が鳴る。

生徒がそそくさと席に着く中、流風は龍之介の席に座る。


「流風君? 授業始まっちゃうよ?」


龍之介の席から窓の外を眺める。

ちょうど件の廃校・旧南小学校が見えた。





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