イケメンヤンキーな鬼塚君は幽霊が〇〇!

@mizuki321

第1話



ある夜の事だ。

女の子が学校に忘れ物を取りに来た。


『明日の提出のノート……あった!』


目当てのものを見つけ一安心。

さあ帰ろうと教室から出ようとした時だった。


タタタタッ


誰もいないはずの廊下の奥から、走るような足音が聞こえてくる。


先生や用務員さんだろうか。


息を潜めて扉の影に隠れ、隙間から様子を伺う。


タタタタッ


足音が扉の前を走り過ぎ去る音がした。

いや、音だけがした。


(誰も、いないのに……)


女の子は不気味さに一刻も早く帰りたくなった。


(でもまだいるかもしれない……)


完全に静かになったのを確認して、そおっと何かに気づかれないように廊下を覗く。


非常灯と月明かりだけの静かな廊下には誰もいなかった。


(今のうちに、早く帰らなきゃ……!)


ほっと胸を撫でおろし、帰ろうとした時だった。


タタタタッ


足音がまた近づいて来る。


まるで自分がいる事に気づいたように。


女の子はいよいよ怖くなって走りだした。


足音も早くなる。このままでは追いつかれてしまう。


そんな時、今は使われていない旧トイレが目に入った。


バタンッ!!


一番奥の個室に逃げ込む。鍵をかって息を潜めた。



タタタタッ


足音が止まる。


そして


キィーー

バタンっ


キィーー

バタンっ


手前から個室を1つづつ確認するようにドアが開く音がした。


(次は……ココだ……)


震える口を手で塞ぐ。


コン、コン、コン


『あーけーてー』


子どもの声だった。

女の子は目をギュッと瞑り、顔を伏せ、耳を塞いだ。


……どれくらい、そうしていただろうか。


いつの間にか眠っていたらしい。辺りは明るくなっていた。


意を決して鍵を開ける。


そこには、

















誰もいなかった。


女の子は安心して個室から出る。


(良かった、朝になったんだ……)


『あ、』


安心して震えた手が滑り、ノートが落ちる。


拾おうとして手を伸ばした先に、影が重なる。


『〇〇ちゃん みーつけたー』


逆さまの顔が、降って来た。


『き、きゃあああぁああぁああぁぁあああ!!!!!!!!!』






「きゃーーーー!!!!!」



怪談を聞いていた女子が叫ぶ。


ここは彗星高校、一年A組。


昼休み。

教室では今この辺で有名な怪談話で盛り上がっていた。


「それからは、その学校では隠れ鬼が禁止されてて、夜の学校でやると、女の子の幽霊にあの世に連れてかれちゃうらしいんだって」


「しかもこれ、この教室から見える廃校の旧南小の話だからな! 取り壊しも決まってるし、これはもう行くなら今しかなくね?!」


「廃校で肝試しとか映えるよなー! 動画上げてYouTuberで一攫千金めざ……」


話の中心にいた男子がウキウキしながら、はしゃいでいた時だった。



バンッ!!



それまで一番後ろの席で机に突っ伏していた1人の男子が思い切り机を叩く。


ワイワイと賑やかだった教室が水を打ったように静まりかえった。



「ぎゃーぎゃーうるせーんだよ……」


気怠げでそれでいて地を這うような迫力のある声の主は鬼塚龍之介だ。

真っ黒な髪から見える鋭い切長の目がギロリと睨む。


「な、なんだよ龍之介〜そんな怒んなって〜そ、そんなにうるさくしてないじゃん〜」


「そ、そうだよ! しかも昼休みだしさ……

あ〜もしかして怖い、とか?!」


「あぁ?!」


お調子者2名が怖がりつつも、明るく揶揄うと、龍之介がヅカヅカと近づいて来る。


「ヒッ」


胸倉を掴まれて顔を近づけ睨まれる。いわゆるメンチを切るというやつだ。



「じ、冗談です……!」



舌打ちをして掴んでた手を離し、そのまま教室から出ていこうとする龍之介。



「……あそこら辺は黒銀高校の奴らが屯ってる場所だから近づくな」



龍之介が振り返らず呟く。未だ静かな教室に大きくないが凄みのある彼の声がよく通る。



「あ、ああ〜あのヤンキーが多くて有名な……じ、じゃあさ、龍之介も一緒に……」



ギロリ。


と、言いかけてる途中で凄い目つきで睨まれた。



「い、行かないですよネー……じゃあ俺らだけで……」


「……どうしても行きたいなら止めねーけど、何があっても知らねーからな……あと絶対に女子は連れてくなよ、良いな?」


最後に凄んでから教室を出て行く。




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