第36話 ギルドマスターとの対面
「こちらにどうぞ」
俺達は冒険者ギルドの奥にある、ギルドマスタールームに案内された。そこにギルドマスターがいるようだ。
「……君達が例の冒険者パーティーか」
椅子に腰かけてきたのはいかにも冒険者として登りあがってきた、という風体のガタイの良い男だった。露出の高い恰好をしているが、筋肉質な身体をしており、そして至るところに古傷が見られた。
恐らくは現役自体に冒険者として、幾多もの死線を潜ってきた証拠であろう。
「話は聞いているよ。君達がキラービーの巣の駆除をしてくれたようだね……」
「は、はい……一応はそうです」
「君達は発足したばかりのEランク冒険者パーティーであるにも関わらず、キラービーを数匹倒すだけに留まらず、キラービーの巣の駆除までやってのけた。あくまでもEランクからDランクへの昇格クエストとして受注したのだから、本来であるのならばそれ以上の扱いをする義務は冒険者ギルドにはない」
ギルドマスターは含みのある口調で続ける。
「——だが、依頼者である村長の方から嘆願をされている。君達がキラービーの巣の駆除を達成してきた場合はそれ相応の褒賞を与えて欲しいと。なので、君達にはそれなりの褒賞を与えるとしよう」
「……それなりの褒賞ですか」
「褒賞……わかんないけど、沢山おいしい物が食べられるって事?」
メルティは都合の良い解釈をしていた。決して間違ってはいないが……。
「うむ。本来の昇格クエストであったのならば、EランクからDランクへの昇格。そして報奨金1000G、というところだったが。あのキラービークイーンの駆除はBランク相当のクエスト難易度だった。故に君達をBランクへの昇格クエストをクリアしたのと、同等に扱おうじゃないか……」
「それって、つまり……」
「そうだ。君達は晴れてBランクの冒険者パーティーというわけだ。三等級特進だな。報奨金も1000Gの所を10000G支払おう」
「やった! やりました! ロキ様っ! 私達、Bランクの冒険者パーティーですよ!」
メルティは歓喜を露わにする。
「これでロキ様を馬鹿にしていた、あのCランクの冒険者パーティーよりも上のランクになりましたよ。ふふーん。どんなもんですか!」
メルティは誇らしげだった。相当、俺が馬鹿にされた事を根に持っていたのであろう。
「それではこれからも頑張ってくれよ。諸君等の健闘を祈る」
俺達はギルドマスターに見送られ、ギルドマスタールームを出たのであった。
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『キラービーの巣の駆除のクエストをクリアした』
クリア報酬。
Eランク冒険者パーティーからBランク冒険者パーティーへの三等級特進をした。
1000Gではなく、10000Gの報奨金を得た
また、『キラービーの結晶』×5。『キラービークイーンの結晶』を換金した。
それによって、7500Gを得た。
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◇
俺達は受付で事務手続きを受け、正式にBランクの冒険者パーティーとして認められたのだ。
「おめでとうございます! これであなた達はBランクの冒険者パーティーです! ここまでのスピード出世は長い間受付嬢をしていましたが、中々、見た事ありません」
受付嬢は笑顔でそう言っていた。長い間……ってどのくらいなんだろうな。受付嬢さんは何歳なんだろうか。意外に年を取っているかもしれない……。女性に年齢を聞くのはマナー違反なので、敢えてそんな事をする必要性はないが……。
「これからも頑張ってください! 期待していますっ!」
俺達は受付を後にした。
――と。その時だった。俺は最初にこの冒険者ギルドを訪れた時に因縁をつけてきた、あのCランクの冒険者パーティーとばったり遭遇する。どうやら彼等はその間、幾度となくBランクへの昇格クエストを失敗し、いつまでもCランクのまま足踏みをしていたようだ。
「……なんですか? 私達に何か用ですか? まだ何か、言いがかりをつけてくるつもりですか?」
メルティは連中を睨みつける。しかし、彼らの対応は最初の頃とは違い、実に大人しいものだった。
「な、なんでもねぇよ……こ、この前はあんな事言って悪かった」
「あ、ああ……お前達がこんなにやるとは思ってなかったんだ。許してくれ」
「……ふふん。随分としおらしくなりましたね。やっと私達の凄さがわかりましたか!?」
メルティは胸を張って、踏ん反り返っていた。
「あ、ああ。そ、その通りだ。そ、それじゃあ、俺達行くから」
連中はそそくさとその場を後にした。
「なんですか? あの対応は……全くの別人みたいじゃないですか」
「冒険者は実力と実績が全ての稼業です。格上の冒険者パーティーには頭が上がらないのが普通です。この前とは優劣が逆転してしまった以上、強気な態度は取れないのでしょう」
フレイアはそう説明した。
「ふーん……そうですか。なんだか張り合いがなかったです。まあ、もういいです。済んだ事ですし。いつまでも根に持っていても仕方がありません」
俺達は気持ちを切り替え、次の目標へと向かっていくのであった。
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