第35話 冒険者ギルドに報告をする
「ご、ご無事でしたか! ロキ様!」
「わ、私達、心配していたのですよ」
「う、うむ……こんな事を頼んでおいて心配する事しかできないのは実に情けない事ではあるが……」
俺達が戻るとクラリスの家族達が俺達を出迎えてくれた。
「……して、首尾の方は?」
クラリスの父親が聞いてくる。
「ええ……予定通りにキラービーの巣の駆除ができました……色々と大変でしたが」
俺はそう、報告する。
「それは本当ですか!? ロキ様!」
クラリスが目を丸くする。
「ああ……本当だ」
「で、ではもう、あの怖い蜂に怯えて暮らす事はないのですか!?」
「……ああ。その通りだ」
「ありがとうございます! ロキ様」
クラリスは唐突に俺の手を握ってくる。クラリスの温かみが直接伝わってきて、思わず気恥ずかしくなってしまう。
「クラリスさん……」
「す、すみません! わ、私、嬉しくなっちゃってつい……」
クラリスは慌てて手を放す。
「……ロキさん。お礼を言っては何ですが、村長と話の方はつけて置きました」
「話ですか……」
「はい。もし、キラービーの巣をロキさん達が駆除できた場合、それ相応を冒険者ギルドの方へすると、村長が約束してくれました」
そうなのか……。それは実にありがたい。確かに報酬の為にやったわけではないが、キラービーの巣を駆除するのはそれなりに大変だったのだ。その苦労がそれなりの報いとなるのであれば、それに越した事はなかった。
「そうですか……ありがとうございます」
「いえ、あなた達のおかげで我々は救われたのです……これくらいの事をするのは当然です。この度はありがとうございました」
クラリス達は感謝の言葉を述べてくる。
「……それじゃあ、行こうか」
「はい!」
用件が済んだ俺達はクラリスの家を後にするのであった。
◇
「いらっしゃいませ! 『ミリアム』の冒険者ギルドへようこそ!」
受付嬢が快活な声で毎度の如く俺達を出迎える。
「あ、あなた達はロキ様のパーティーではありませんか。お疲れ様です! 昇格クエスト、クリアできましたか? キラービーは大変危険なモンスターだったので、大変だったとは思いますが……」
「それについてなんですが……」
俺はアイテムポーチからアイテムを取り出す。
『キラービーの結晶』×5。そして、『キラービークイーンの結晶』だ。これ等のドロップしたアイテムはそのモンスターを倒した証でもある。
「こ、これは……まさか、キラービーだけではなく、あのキラービークイーンまで倒されたのですか……」
受付嬢は驚き、言葉を失っている様子だった。
「え、ええ……はい。一応」
「す、凄いです。で、ですが、こういう場合、どうしたらいいのか……」
その時、別の受付嬢が担当して貰っている受付嬢に耳打ちをしていた。当然のようにギルドには何人もの受付嬢が分担しているのだ。一人だけで対応しているというわけではない。
「そ、そうなんですか……。わかりました」
何か伝聞を受けたようだ。受付嬢は改めて向き直り、話を続ける。
「奥でギルドマスターがお待ちです。今回のクエスト報酬やランクアップなどについてはギルドマスターから直接お話があるそうです」
「わ、わかりました」
こうして俺達は奥の部屋に案内する。そこにこの『ミリアム』のギルドマスターがいるそうだ。ギルドマスターとは何か……。要するにこのギルドで一番偉い人という事である。
俺達は多少の緊張を覚えつつも、ギルドマスターと対面する事となるのであった。
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