第11話 『アダマンタイト』を手に入れる

 探索は難航した。何せ『オリハルコン』や『アダマンタイト』のような金属は希少な物だ。希少な素材がそんな簡単に見つかるはずもない。


 ただただ、俺は諦めずに捜索を続けた。


 そして、ついに見つけたのだ。


 崖の頂上に、光り輝く鉱石がある事を。


「……やった。ついに見つけた」


 俺は安堵の溜息を吐く。この光り輝く鉱石は間違いがない。現実的に手に入る鉱石の中では、もっとも強固な金属『アダマンタイト』であろう。


 だが、俺は甘かった。世の中、やはりそんなに簡単に出来ていなかった。そんな貴重な金属が、ムキ出しのまま普通に落ちている事など、現実的にはありえなかったのだ。やはり現実は厳しかった。


「なっ!?」


 俺は思わずたじろいだ。『アダマンタイト』の塊が突如として動き出したのだ。金属が勝手に動き出すわけがない。その『アダマンタイト』は確かに金属でもあるが、同時に生物でもあったのだ。


 そいつが振り返る。亀のような顔が姿を現す。


そのモンスターの名は『アダマンタイトタートル』と言った。甲羅の部分に大量のアダマンタイトを身に着ける事で、高い耐久性を得ているモンスターだ。


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


『アダマンタイトタートル』は突如、咆哮を上げた。


「くそっ!」


 突然の遭遇に俺は動揺を抑えきれなかった。だが、やるしかない。ここでこいつを倒し、『アダマンタイト』を手に入れるより他に活路はなかったのだ。


「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 俺は剣を振り下ろす。


 ――しかし。攻撃の寸前。『アダマンタイトタートル』は頭と両手足を甲羅の中に引っ込めた。


 キィン! 甲高い音がする。当然に攻撃が効くわけがなかった。『アダマンタイトタートル』の甲羅はミスリルよりもずっと硬質な『アダマンタイト』で出来ているのだ。俺の手が痺れるだけだ。


 攻撃がなくなったかと思うと、今度は『アダマンタイトタートル』が頭と両手足を再び露出してきた。


 そして、口から息吹(ブレス)を放つ。水の息吹(ブレス)だ。勢いよく水流が放たれた。驚異的な速度で放たれる水流は岩すら斬り裂いてしまう程であり、決して侮れるものではなかった。

 

「うわっ!」


 俺は何とか、その攻撃を避ける。危なかった。今の俺は防具も何も装備していないのだ。あの攻撃を当たったら、間違いなく即死だっただろう。


 ――だが、その攻撃を受けて俺の中に一つの考えが浮かんできた。


 恐らくだが、『アダマンタイトタートル』は頭を引っ込めて、身を固めつつ攻撃はできない。攻撃する時は間違いなく頭を出しているのだ。そして『アダマンタイトタートル』の硬い部位は甲羅の部分だけでしかない。頭と両手足に至っては普通の皮膚でしかない。


 俺の『ミスリルブレード』でも問題なく斬り裂けるはずだ。


 俺はその瞬間を見極めた。頭と両手足を引っ込めて『アダマンタイトタートル』が防御体勢を取る……そしてしばらくして再び露出する。そして、水の息吹(ブレス)を放つのだ。


 さっきと同じ攻撃パターンだ。俺は何とか、水の息吹(ブレス)を避ける。


「はああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 そして露出している首を『ミスリルブレード』で勢いよく斬り落とした。


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


『アダマンタイトタートル』が断末魔を上げて果てる。首を刎ね落とされたのだ。首が落ちて生きていられる生き物などそう多くはない。せいぜい、不死者(アンデット)と呼ばれるようなモンスターくらいだろう。もっとも不死者(アンデッド)は最初から死んでいるだけでもあるが……。


「はぁ……何とかなったか」


 俺はほっと胸を撫で下ろす。


 こうして俺は『アダマンタイトタートル』を倒し、希少金属である『アダマンタイト』を入手したのであった。


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