第115話 ……嫌な予感

「りんご飴うまうま~」


 合流してから数分後、千葉はりんご飴を幸せそうな顔で食べている。


「それはなにより」


 俺も、小腹が減ったのでポテトを頬張っていた。


「にしても人が多いわね」


「全然進まないな」


 通りは人で溢れかえり、数メートル歩くだけでも5分程かかる。

 これはこれで夏らしいのかもしれないな。


「立川、今何時?」


 服の袖を引っ張ると、上目遣いで聞いてくる千葉。


「えっとー、7時13分だな」


「ならあと30分であそこまで行かなきゃいけないのか」


「なんだ?どっか行きたい場所でもあるのか?」


「羽彩に教えてもらったの、人が居なくて花火がよく見える場所」


「へー、よく知ってるなあいつ」


 氷見谷の知識に関心する俺だったが、


「…………嫌な予感がするな」


 あいつが教えた場所、待ち伏せされているかもしれない。

 十分あり得る話だ。だって、千葉と俺との行動をあいつが監視しないわけがない。


「心配しないで、羽彩は予定があるから来ないわ」


「予定ね……………」


 俺達を監視するのが予定じゃないだろうな。まぁそれは無いか。


「とりあえずそこに15分前には着きたいの。その前に色々買っててそこでゆっくりしたい」


「この人混みにずっといるのは俺もごめんだ。賛成」


「なら早速屋台巡りをしよう!」


「おいそんなに引っ張ると周りの人に迷惑だろ?」


 足早になる千葉。

 チラッと見えた横顔は、りんご飴を食べていた時よりも笑顔が溢れていた。

 そんな俺達の姿を近くでこっそり見ているのが……………


「いい感じみたいね、あの2人」


 氷見谷であった。

 ニマニマとした表情で俺達を付けている氷見谷。

 その姿に気付かない俺達。

 完全に氷見谷の思うつぼであった。


「さて、心葉。面白い物を見せもらいましょうか」


 クククと不快な笑みを浮かべる氷見谷。


「ん?」


「どうしたの?」


「いや、誰かに見られてたような」


 後ろを振り向くが、誰もこちらを見ている人はいない。


「気のせいでしょ、こんなに人がいるんだから」


 気のせいにしては、鳥肌が立つくらい嫌な視線を感じた。


「そんな事気にしないでさ、楽しもう?せっかくのお祭りだよ」


 顔を覗かせる千葉に、


「だな」


 俺も気にしないことにした。

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