第113話 ………え?
「ここに集合と言われたけど…………合流できんのか?」
時刻午後7時。花火まであと1時間。
まだ空は黄金色に輝き、外気も日中よりはマシだが蒸し暑い。
それに、なんといっても人が多い。
濁流の如く、人が行き来をしている。
ちょうど、神社から出店の通りが始まり、そこを抜けると、花火がよく見える公園に移動できる。
これは混んでも仕方がないな。
でも、この状況で千葉を見つけるのは自信がない。
待ち合わせをしている人が神社を囲っている。それに、この中から1人を探すのはウォーリーを探せレベル100くらいの難易度だ。
まぁ、千葉は目立つし大丈夫かもしれないな。
あの金髪、遠くからでも目立つし、それに登場したらみんな千葉の方を向くだろうし。
そんなに心配はいらないかもな。
縁石に座りながらスマホを見て、千葉の到着を待っていると、
「来たわよ、立川」
聞き覚えがある声と共に、俺は肩を叩かれた。
「お、やっとか……………………………え?」
顔を上げると、俺は唖然する。
「お、お待たせ」
金髪ではなく、ベージュに髪を染め、白と赤で彼岸花が丁寧に描かれてている浴衣を着た千葉がいた。
「おま……………金髪じゃない!?」
全然印象が違う!
もうギャルじゃない!よく渋谷とかにいる最先端のファッションとかを取り入れてるイマドキ女子だ。
目を見開く俺に、
「そうよ、さっき羽彩に染めてもらったの」
頬を赤くして、カールが掛かる毛先をクルクルといじる千葉。
正直可愛い。
金髪の時とは違った可愛さがある。俺はこっちの髪色の方が好みだ。
それに、浴衣。
完全に俺を殺しに来ている。
ちらりと見えるうなじがエロい、エロ過ぎる。
「あの……………じっと見てるだけじゃなくて感想とかないわけ?」
「すまん、つい」
見惚れていた、なんて言えるわけもなく、
「似合ってるよ、金髪もよかったけど、こっちも千葉の良さを引き出してる。それに、浴衣も着こなしてる」
可愛いとは言えない。それに、浴衣が似合う体型…………………これも絶対に言えない。
それを聞いた千葉は、
「あ、ありがと」
自分から聞いてきたのに、ボっと顔を赤くする。
ダメだ、いつもみたいに接せない気がする。
印象が変わり、可愛さに拍車がかかっているから。
それと雰囲気。
夏祭り、周りにはカップル。これも俺をドキっとさせる。
だがしかし、千葉に気付かれないようにしなくてはな。
また変な事になっては困るからな。今日はホテルに連れ込まれる可能性もなくはない。
そこは、流されず俺が徹底して拒まくては。
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