第90話 ロッカーの中

「マジ?」


 と、千葉は耳を澄ませる。


「ちょ――アホか」「なんで―――――早くしろよ」


 すると、段々と近づいてくる声。


「マジじゃん」


「だから言ったろ?」


「………………………………。」


「……………………。」


 顔を見合って無言になる。

 そして、次の瞬間、


「ちょ、どうすんのよ!」


 千葉は俺の胸ぐらを掴み、小声で怒鳴る。


「んな俺に言われても困るんだが!?」


 お前だけじゃなくて、こっちも困るんですけど!?


「クラスの人にバレたらヤバいってこれ!」


「俺だってそうだよ!」


 この光景を見られたらなんて思われる事やら。変な噂を流されかけない。

 付き合ってる~だの、いかがわしい関係~だの。

 最後のは氷見谷と千葉だったらの話だが。


「本当にどうすんのよ!何とかしなさいよ!」


「無理言うな!」


「とりあえず、ど、どこかに隠れなきゃ」


 辺りを見渡しながら、あわあわと慌てる千葉。


「どこかってどこ!」


「とりあえずこっち!」


 千葉は俺の手を掴むと、掃除ロッカーの中へ連れいく。


「ここ入って!」


「こんな狭い場所2人じゃ無理だって!何考えてるんだよ!」


「仕方ないじゃない!ちょっと狭いくらい我慢しなさいよ!」


 キレ気味に言うと、千葉はロッカーの中に俺を押し込み自分も中へと入ると、ドアを閉める。


『ちょ、クソせめーじゃんか』


『クラスのやつらになんか言われるのとどっちがいいのよ』


『………まだこっちの方がマシだ』


 にしても狭すぎる。体が千葉とピッタリくっついてし、顔だって数センチ先にある。


「早く取れよ~」「教科書くらいちゃんと」


 ロッカーの外から聞こえるクラスメイトの声。どうやら忘れた教科書を取りに来たらしい。

 この様子ならすぐ帰ってくれそうだ。


 俺達も授業には遅れないだろうし、あとはこの状況を数分耐えるだけだ。

 しかし、色々マズいぞこの状況。

 千葉のいたるところが当たって……………


『――――んっ//』


 突然、千葉はビクンと体を跳ね上げ声を漏らす。


『おい、なにやってんだよ!』


 目の前で喘ぐ千葉に顔を赤らめながら、声を抑えて怒鳴る。


『だってあんたの手が―――っ――』


『……………手?』


 自分の手を見ると、千葉のスカートを捲り上げ、股に手が挟まっていた。


『こ!これは不可抗力だ!決して変な意味はない!狭いのが悪い!』


 真っ赤な顔を隠すために、上を向きいながら言う。


『そんなの知ってるわよ!でも退けなさよ!』


『んな事言われてもよ』


 俺だって、硬いアソコがお前に当たるの必死に避けてるんだよ!腰を限界まで引いてさ。

『手くらい少し我慢しろよ!』


『そんな事言われても――――っあ/』


『だから変な声出すな!』


 手に当たる千葉から出る熱………柔らかい感触。興奮するからやめてくれ!

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