第31話 2人の時間
「いや~なんかいっぱい喋ったら疲れちゃったわ」
リビングの扉を開けると、背伸びをしながらソファへと移動していた心葉の隣に座る。
「私もコンビニまでパシられて疲れたんですけど~」
と、言いながら私の肩に頭を預ける心葉。
「いい運動になったからいいじゃないの」
「それを疲れたって言ってんでしょ~」
「私も色々と疲れたのよ、本当に色々と」
私も心葉の頭へと頭を重ねる。
心葉の匂い、寄り添った時に伝わる肌の温もりや柔らかさ。心葉の全てが愛おしく、どこか儚い。
この体で、色々な辛い事を経験してきた、背負ってきた。
それを忘れさせようと、忘れられなくても、一人じゃないと安心してもらうために私は彼女の頭を撫でながら抱きしめながら言う。
「ねぇ、心葉。立川くんに言っといたわよ、心葉の事」
「うん、ありがとう…………それで、彼はなんて?」
平気そうにしているが、私の服の袖をギュッと力強く握っている。
他人に自分の過去をさらけ出すのは怖い。誰だって怖い事だ。
少しでもその恐怖を軽くさせようと、
「立川くん、話聞いて号泣してたわよ?………………言わないでくれって言われたけど、反応が面白そうだから伝えておくわ」
含み笑いをしながら明るく振るまった。
「……………それホント?」
「ホントよ?それに、俺が何かしてあげてたらって、めっちゃいい事言ってたし。立川くん、悪い人じゃないでしょ?」
「フフっ、めちゃめちゃいい人じゃない」
「だから私言ってたでしょ?」
「いつもみたいに信じておけばよかったわ」
「本当に、そうよね」
「あの立川が私の為に泣いた………か。考えられないわね」
「ちゃんと目の前で見てたから事実だわ」
「ええ。氷見谷が嘘つく訳ないし」
私の膝へと頭を乗せている心葉。
「あ~ぁ、本当によかったよかった。氷見谷以外に味方いたんだ私」
「もちろんいるわよ。世界中にいくらでもね」
「でも、目に見えて分かるのは氷見谷とあいつだけだよ……………」
「そうね、2人とも心強い味方でしょ?」
「うん……………本当にそうね…………」
段々と心葉の声は震えていき、私の太ももは濡れていく。
「私…………ちゃんと味方がいたんだ…………本当に…………いい人が…………」
「これも前から言ってるでしょ?…………ちゃんといるって………………」
自然と私の瞳からも、涙がこぼれる。
だけど、心葉の前では弱い自分は絶対に見せない。だから、バレないように静かに泣きながら、膝で泣く彼女の頭をそっと撫でるのであった。
*すみません、バグって更新遅れました
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