第16話 ご飯食べていかない?
「それで~、なんで俺達はスタバ飲みながら氷見谷の手料理をリビングで待ってるわけ?」
エッチ回避から20分後。俺達3人の姿は氷見谷宅のリビングにあった。
UberEatsで3人分のドリンクを頼み、到着を待っていると、不意に千葉がこう言いだした。
「お腹減ったわね」
時刻は午後6時半。早い家庭だともう夜ご飯を食べ終わっている時間帯だ。
「確かにそうだな。なら俺はスタバ貰ったら帰ろうかな」
玄関で商品を受け取って、そのまま帰ろうと思いバッグを持ち部屋を出ようとすると、氷見谷は俺の服を掴み、
「せっかくなら、うちでご飯食べていかない?私料理とか作れるし」
「お前、料理作れるのか?」
「えぇ、まぁ家庭料理程度だけど」
「本当に食べれるもの作れるのか?」
細い目で氷見谷を見る俺に、
「氷見谷の料理めっちゃ美味しいからね!?」
千葉は横からにゅっと顔を出した。
「そ、そうか…………でも精力剤とか入れられそうだし…………」
さっきあんな事されたんだ。疑っても仕方がない。
「あなた、私の事なんだと思っているの?」
「痴女」
ジトっと睨む氷見谷に、俺はキッパリそう言う。
多分、これ以外に氷見谷を一言で的確に表す言葉な存在しないだろう。すべて言い表すな原稿用紙2枚くらいの量が必要だ。
というわけで、今、俺と千葉はリビングのテーブルで、氷見谷はエプロン姿でキッチンにいるという異様な光景が広がっているというわけだ。
ギャルと学級委員とただのクラスメイトの男子が、食卓を囲む。
これはエロゲ―でしか見た事ないような光景だな本当に。
「立川くんはなにか食べれないものはないかしら?配慮するけど」
トントンと音を立てるキッチンから氷見谷は顔を覗かせた。
「好き嫌いは特にないから大丈夫だ。ありがぁ……お前なんで包丁を俺に向ける!?」
温厚のある言い方をしていると思ったが、明らかに殺意のある持ち方で俺に包丁を向けていた。
「あ、ごめんなさい。つい」
「ついってなんだよ!お前、俺を殺す気か?」
「殺意はないわよ?この持ち方は不可抗力ってやつ」
「そっちの方が怖いわ!」
氷見谷、本当は天然なんじゃないのか?それかただのバカ。
これまでは真面目な氷見谷しか見たことがなかったから不自然極まりない。
本当に精力剤を仕込まれないといいのだが…………「うっかり」とお茶目舌を出されて謝罪された挙句襲われたら絶対に抵抗できない。
どちらかと言えば、「さっきやらなかったのが悪いのよ」とパンツのひもを緩めながら言われるだろうけど。
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