第3話 いけると思ったが………

 ガラガラガラと、俺は普段の学校生活と変わらない強さで教室のドアを開ける。


 すると、こちらに気付いたからかガタンと机の音が鳴ると思うと、2人はすぐさまほどけている服を手で隠し、俺に向かって視線を向ける。

 だが、そんなのお構いなし。俺は机へと歩みを進める。


 机の約50センチ程前まで来ると、床が若干ぬるぬるしていて足を取られそうになるが気にしない。

 賢者タイムなのか、ただこの状況が把握できていないからなのか、ポカンとした表情で俺を見つめてくる。


 それも見て見ぬふりだ。俺は真顔で机の中を見るために椅子を引く。

 すると、2人は理解しないまま俺の机からそっと離れ、前の席に移動した。


「ふふふふ~ん、ふふ~ん」


 と、俺は呑気に鼻歌を歌いながら机の中を覗くと、忘れていた課題がちゃんと入っていた。濡れていなく、無事であった。


 机に手を付いた時に、千葉か氷見谷か分からないがどちらかの液が手に付いたが今は気にしない。中を覗いた時、チラリと千葉のツルツルで綺麗に手入れされたアソコが見えたがこれも今は気にしない。


 この時、俺の息子もスボンを突き破りそうなくらい元気がみなぎっていたが、これも我慢する。


「よし、あったから帰ろ~」


 口笛を吹きながらドアの方に向かい、廊下に出てから教室の中を向くと、2人が目を真ん丸にしながらこちらを見ていたが、気にせず静かにドアを閉めた。


 作戦は大成功のようだ。


 少し頬笑み、自分の息子を抑えながら安堵のため息を吐くと、


「ちょっと待ったぁぁぁ!!!!」


 教室中から絶叫が聞こえた。

 そして、凄まじい足音がこちらに近づいてくる。刹那、ドアがバンっと勢いよく開いた。


「あんたなに見て見ぬふりしてんのよ!」


「いや、邪魔しちゃ悪いかなーって」


「なら最初から入ってくんな!」


 派手なネイルを施している人差し指を俺の喉元へ当て、目はトロンとしているものの、張った声で千葉は言った。


「そう言われても、課題取らなきゃ行けなかったからさ」


 手に持っている課題を提示すると、


「だったらもっと考えて入って来なさいよ!」


「どうやってだよ」


「ほら………ノックするとか一声かけてから入るとかさ」


「ここはお前の部屋かよ」


「違うけど………そのくらいの気づかいしないさよ!」


「クソ理不尽じゃねーかよ」


 誰が放課後の教室にノックして入るものか。どれだけ礼儀正しい人でもそんな事しないぞ?


「心葉、もう手遅れよ。諦めなさい」


 後ろから千葉の肩を叩き、ため息を吐くのは氷見谷だった。

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