群馬からの帰還者

バブみ道日丿宮組

お題:群馬のあいつ 制限時間:15分

群馬からの帰還者

 群馬から帰ってきたあいつは今や歩くアサシン、指名手配犯。決して見てはいけない人間となった。あいつが行く進路は注意報、警報が毎日のように鳴り響く。

 それがわかるのは群馬で唯一生き残った研究者が最後の抵抗で埋め込めれた装置らしい。とはいえ、それもいつまできちんと機能するかはわからないとさ、困ったことにな。

 心臓のエネルギーを利用して理論上は無限の稼働を続けるはずなんだだが、東京にやってくるまでに度重なる惨殺行為、自衛隊たちの対抗処置による銃撃でその装置が内部で壊れかけてる可能性はある。だが改造された肉体はそれでも傷一つつかないと報道してた。

『見かけたら逃げるか、死を覚悟しろ。戦うのは不可能』とも。

「……そんな話を信じられるわけがないと思いたかったんだがな」

 警報が出て、安全と判断になった自分が住んでた街に戻ってくるとそこは映画でよく見る怪獣でも通ったかのように一本のけもの道がマンションを破壊し、デパートを破壊し、線路を壊す惨状だった。

「ねぇなんであのこ群馬にいったの? がりがりの博士やろうだったじゃん」

「割高の仕事が見つかったって言ってたな。おまけに資格も取れるとかなんとか」

 実際は人体実験のサンプルになる仕事とは行った誰もが思わなかったんだろう。しかも研究者たちも成功するとも、制御できない状態になるとも考えていなかっただろう。

 だからこそ、多額の金はあいつの家には入った。それこそ一生使い切れないくらいに。

「相変わらず馬鹿なのね。今やってることも昔と対して変わらないじゃない」

「そうだな」

 昔から三人でよく悪戯をして、物を壊しては市役所で怒られ続けてたものだ。よくあいつは色んな実験とかいってやりあったものだな。

「……もうあいつは殺人までいったから、昔と同じとはいかないさ……」

 指名手配。

「……そうね」

 自分たちが住んでた家に歩くたびに見えてくるのは、何かの肉塊。スーパーから吹っ飛んできたと思いたいがきっとそうではない。

 まさしく、誰かの手……なんだろう。カラスたちがつついてるのが禍々しさをより一層加速させた。

「あいつはもう戻ってこない」

 変わってしまった。なにもかも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

群馬からの帰還者 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る