魔王たちと英雄たち
バブみ道日丿宮組
お題:幼い魔王 制限時間:15分
魔王たちと英雄たち
山がまた1つなくなった。
地図の描き直しが必要になった。
「いい商売にはなるけどーー」
「なるけどじゃないでしょ!」
線を引き始めたところで、作業場に幼馴染が入ってきた。
「またあの魔王が環境破壊してるのよ!? やめさせなきゃいけないじゃない!」
ぎりぎりと歯ぎしりする幼馴染はいかにも不愉快そうだ。触ってはいけないオーラがまさに彼女がいう魔王に近い。
「僕は戦う力がないからね。こうして庶民が役に立つ情報を与えてくしかない」
知識あるものは知識ないものの助けになるように。それがお互いがお互いを守り、世界を作ってる。
「偉そうなこといってるけど、その情報も援助も交戦も私がしなきゃいけないんだからね!」
「うん、知ってる」
ぼろぼろで下着もうっすらと見える彼女はまさに魔王と戦ってきた後なのだろう。
空に赤い光と紫の光がぶつかってたのでここからもよく見えた。赤い光が吹き飛ばされて山に突っ込んで、消滅したのも。
「何よ、その顔! 私が負けたわけじゃないからね。吹き飛ばされただけなんだから」
その影響で山が消えたわけなんだけど、これもまた力があるものが力あるものとして行動しなければいけないバランス。
ゆうに英雄というべき存在。
「相手はまだ子どもじゃないか、手加減でもしてあげれば僕がこういう仕事を繰り返さなくてもいんだけど」
「そうだぞ、子どもなんだぞー敬え、敬ってよ」
軽い何かが太ももに接触すると同時にその声は出現した。
「あんた! いっつもそうやって私のフィアンセに手を出さないでよ! 魔王なんだから! もっと非情に殺戮とかしなさいよ!!」
いつもの指定席といわんばかりに突然と現れた魔王と名乗る幼い少女はふとももに座り、
「それは他の人がやってるじゃない。ボクはここで遊んでるのが好きだよ。これも十分非情じゃないかな?」
首を傾げながら、僕の方を見上げた魔王は悪びれる様子もなくほっぺたを触ってきた。
「だ・か・ら! なんであたしだけに非情するのよ! しかもやっつける理由にならないじゃない! あなたもあなたよ! 少しは遠ざけたりなんか抵抗してよ! そしたら……」
「そしたら?」
「そしたらーーそいつをやっつけられるから……」
歯切れの悪いことをする彼女は本心ではこの魔王を倒したがらない。小さな少女だからということもあるが、魔王の力を持ったにも関わらずこのこがまったく悪さをしたがらないから対処に困ってるのだ。
他の魔王たちは他の英雄が討伐してってる。
「そういう日もいつかくる」
そうならない日もくるかもしれない。
「さぁ、ふたりともせっかくだから手伝ってくれ。目撃者がその情報を正確に教えてくれたほうがわかりやすい。あと君の服はいつものところに新しい良いものを買ってあるから」
わ、わかったわよと、顔を赤くした彼女は作業場を後にした。
魔王たちと英雄たち バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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