第36話 運営お喜び。
イベント期間中、モンスターをビーストキングダムへ移住させると、そのフィールドの同種族リポップ率がどんどん下がっていくルールだった。
そして私はイベント開始直後から三十分ずっとひたすら、何故か勝手に永遠に、ヒールラビットの説得に成功し続けていた。
いや、もうこれ、説得って言うか、私何も話してないのにヒールラビットが最初から全て知っててノリノリで移住してった感じじゃんね。私関係無いじゃん。
「ま、まぁ良いや。絶対にペットロイド欲しいし。有利な分には目を瞑ろう。アイテム欄にちょっと見ない数の【ビーストハート】が集まってるけど、知らない知らない」
多分、今他のプレイヤーが現時点で十個とか百個とか集めてイベントランキングに乗っているのに対して、恐らく暫定一位の私だけ文字通り桁が違ってる筈だ。
それとも、他のプレイヤーもこんな感じのイベントが起こった人が居るのかな?
「…………そうだね。自分だけに特別なイベントが起きただなんて思うのは、ちょっと自惚れてるね。他の誰かにも似たようなイベントが起きたと仮定して、油断せずに行こうか」
私は兎が居なくなって寂しくなった最初の草原を見渡してから、兎海から開放されたヒイロを抱っこし直した。
イベントの事は両親に話した。ペットロイドが欲しいと父さんと母さんと妹に話した。
父さんも母さんも、夏休みの宿題だけしっかりとやれば、全力で手伝うから好きなだけヤレって言ってくれた。
あまり仲の良くない妹も、珍しく応援してくれた。
本当にありがたい。どうせなら、ペットロイドを手に入れたうえで、更に100万円と豪華客船の旅も一緒に手に入れて、家族に孝行しようか。
「見てろよ。全力だ」
気合を入れた私は、草原から飛び出した。
◇
【イベントランキング】00:42現在。
◇【ビーストハート】所持数ランキング。リアルタイム。
◇【ビーストハート】所持数=
・1位 キズナ 21.587BHP
・2位 チョコ 5.121BHP
・3位 我が名はカバディ 1.003BHP
・4位 王様の耳は俺の耳 886BHP
・5位 ルルミュラ 820BHP
・6位 勇者ヨスヒコ 801BHP
・7位 レオンハート 672BHP
・8位 もふもふスターダスト 88BHP
・9位 激辛ペペロンチーノ 50BHP
・10位 エルフっぽいど 39BHP
◇
「あははははは! 見てくださいよ主任! キズナちゃんがクワトロスコアで独走中!」
「またチート騒ぎが起きそうだな。朽木、先手を打って上位三名が起こした騒ぎをシークレットイベント化してワールドアナウスに流せ。所持個数に説得力を与えろ」
「了解でーす。キズナちゃんは【進撃・兎のお姫様】。歌姫ちゃんは【神典・セイレーングラフ】。カバディはこれ……、どうしましょう?」
「…………そいつは事故みたいなもんだからな。どうするか」
「イベント開始してすぐ、偶然倒した徘徊ボスがまさか、移住に一発成功するとか誰も思わないですよね。まぁ【友誼・彷徨う獣の帰る場所】とかで良いか」
☆ワールドアナウス。イベント開始最初の三つのみシークレットイベントの発生がアナウンスされます。
・プレイヤー・キズナがシークレットイベント【進撃・兎のお姫様】を発生させました。
・プレイヤー・チョコがシークレットイベント【神典・セイレーングラフ】を発生させました。
・プレイヤー・我が名はカバディがシークレットイベント【友誼・彷徨う獣の帰る場所】を発生させました。
☆以降シークレットイベントの発生はアナウンスされません。
☆プレイヤーの皆々様、ふるってシークレットイベントをお探しください。
◇
アナウンスを聞いてから、ランキングを見た。
なんだこれ。あれってシークレットイベントだったのか。
ふむ。シークレットイベントってこんな感じなのか。イベント進行の画面とか出て来なかったけど、バグとかチートじゃなくて良かった…………。
アレかな、勝手に始まって勝手に終わるイベントはシステムウィンドウに表示されないとか、そういう事なのかな?
「て言うかチョコさんすごくね? 何やったのあの人」
多分向こうも私に同じこと思ってるだろうけど。
「セイレーングラフ? セイレーン……、なんか歌に関わるイベントかな? 人魚とかハーピィを歌で説得したとか? ふむ、チョコさんっぽいな。…………人魚って獣系なの?」
彷徨う獣の帰る場所って奴は、なんか彷徨ってる獣をビーストキングダムに移住させたのだろう。彷徨うって表現なら、多分徘徊ボスか何かをイベント開始時に討伐か説得かで、一発成功でもさせたのかな。
まさかボスまで説得出来るとは。
「独走してるけど、思ったよりみんなも短時間でえらい数稼いでるな。…………やっぱり油断せずに行こう」
もしこの兎もふもふ事件が起きなかったら、もうどうにもならない差が生まれて入賞なんて不可能になる所だった。
どんなフラグを踏んで発生したイベントだったかまるで分からないけど、幸運だったと思おう。そして得られたチャンスを物にして、絶対に入賞してやるんだ。
「よし、まずは西の森からだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます