第34話 取捨選択の基準。
-クリティカルエッジ起動。
-クレセントヴォーパル起動。
「クレセントヴォーパルソード!」
初期エリア三つのフィールドボスであるオールドトレント、ミストクラウディア、ミステリーブックマンを全て一人で瞬殺させられた私は、完全に見学と化してる三人とヒイロを伴って森を抜けた先にある街に辿り着き、その街でファストトラベルに使うための噴水を解放してからまたボス戦に挑んでいる。
レベルがドゥンドゥン上がってく。もう二十八だ。
て言うかファストトラベルって噴水でやるんだね。知らんかった……。
森を抜けた先になる街の名前はティップスタ。そしてティップスタの先にあるフィールドは山と森と洞窟。
ティップスタルートの次の街は洞窟を超えた先にあるらしく、私はまた一人で洞窟の中に居るフィールドボス、シャードゴーレムと戦っていた。
コイツの何がウザイって、ゴーレム系のモンスターはクリティカル部位が弱点のコアにしか存在せず、そしてコアは基本的に隠れている。なのでコアが剥き出しになるまでクリティカルが出せない私は、クリティカルエッジというほぼ何にでも使える貴重な汎用火力スキルを封じられてしまった。
なのでムカついたからクレセントヴォーパルソードで無理矢理クリティカルを出してクリティカルエッジを使ってやったぜ。やろうぶっ殺しゃー!。
いやぁ、ヴォーパルソード強いわぁ。
無条件クリティカルとかアホなのかな。壊れスキルである。クリティカルエッジと無限にシナジーが発生してるし、ヴォーパルソードのコストが重いけど、クリティカルエッジのコストはクソ軽いから結局トントンかなって。
いやだってさ、クリティカルエッジはこれ、ダメでしょ。消費がたった百なのにダメージが倍になるって、絶対ダメだって。
ヴォーパルソードが発動に千も必要なのに、クリティカルエッジはたったの百。なんでこのスキル今まで修正されてないの?
何か理由があるの?
「………俺もキズナ流習おうかな」
「チョコも☆」
「俺も実はちょっと齧ってんですよね、キズナ流。じいちゃん達に一緒に習ったことが少しあって」
「もしかして学生なのに最前線に居れる理由って……?」
「まぁ理由の全部とは言いませんけどね」
「やめろー! もう! 目を離したらすぐ変な話ししてこのー!」
「うい、シャーゴレ討伐おつー」
「ぬん。ねぇポイポイ、クリティカルエッジってなんで修正されないの? 効果強いのにコスト安すぎない?」
「ん? 単純に使い手が少ないからだぞ」
「……え? なんで? こんなに便利で強いのに?」
私なんてほぼ全ての攻撃にクリティカルエッジ使ってるんだけど?
「理由はいくつかある。単純にスキルスロットが足りなくて候補から外れたり、燃費悪くても倍率高いスキルが選ばれたり、もっと根本的にクリティカル部位を正確に狙い続けられる奴が少ないとか、そんな感じ」
「…………? 狙えないって、基本的に首斬るか頭狙うか胸突くだけじゃね?」
今回のシャードゴーレムみたいな例外も居るけど、基本的に生物系モンスターも頭と首と胸がクリティカルポイントのはずだ。
「それが簡単に出来たら苦労しねぇんだよ。むしろお前どうやってるの?」
え、いやそんなこと聞かれても……。
「首狙って斬って頭狙って叩いて胸狙って突くだけでは?」
「ダメだこりゃ」
「これがリアルチートか」
「貫禄の無自覚さんだぉ☆」
「なんなんだってばもう!」
他に何かあるのかよ!
「常に動き回ってる敵の急所を正確に狙い続けられる訳ねぇだろ。普通の攻撃スキルなら急所じゃなくてもダメージ出せるのに、クリティカルエッジだと急所に当たらないと発動しない。例え百だとしても貴重なリソースをドブに捨てるくらいなら普通の汎用火力スキル使うんだよ。VR以外のネトゲなら難しくても出来て当たり前、出来なきゃ地雷って感じだが、VRだと自分で動かなきゃいけないから、高火力でも難易度が高いスキルは嫌われる。それなら普通の汎用火力を普通にぶつけた方が早いしDPSに繋がる」
「えぇ……、他の部位に当てられるなら急所にも当てようよ」
「このリアルチートが」
「だから止めろってそれー!」
首も頭も胸も全部いっぺんに隠せる訳じゃないんだから、どこかしら狙えるでしょうよ。
仮に腕で前をぴっちり閉めて三部位守れるガードをしたってさ、それならそれで私の場合は後出しヴォーパルソード使えば良いし、視線切ったらもっと手痛い攻撃が来るぞって思い知らせれば視線の為にガードは空くじゃん。なら狙えるじゃん。
なんなんだよもー! 人をリアルチートリアルチートって、まったくもう!
「まぁそれだけじゃなくて、簡単な話し、MP百で二倍とMP千で三倍なら、三倍の方が選ばれやすいってのもある。スキルスロットが有限だからな。どこに当てても三倍ダメージのスキルとクリティカルのみ二倍のスキルだったら、燃費悪くても三倍選ぶ人が多いんだよ。別にクリティカルエッジが無くてもクリティカル自体は出せるしな」
「…………なるほど」
言われてみれば確かに?
三倍の方はどこに当てても三倍と言う事は、別にそのスキルでクリティカルを狙っても良いんだからダメージ六倍になるもんな。
だったら消費十倍でも、数に限りがあるスキルスロットを節約するために、クリティカルエッジが選択肢から外れるのは有り得る話しか。
消費が重くても回復しちゃえばダメージ倍率だけが残るもんね。
「うん。理解した」
やはり腐ってもトッププレイヤーの一人か。有用な知識が詰まってやがる。
「それにほら、お前が欲しがってるクレイジーハートなんてクリティカルエッジと競合する最たるスキルだぞ。コスト重くないし持続するバフ系アクティブスキルだし、どこに当ててもダメージが二倍。受けるダメージさえ対策立てればクリティカルエッジの上位互換だ」
「あー……。私同時使用するために欲しがってたけど、どちらかを捨てるならそうなるのか……。為になるなぁ」
「なるぉ〜☆」
そんな、所々で知識を降るって貰いながら、私たちはイベントの準備を進めて行った。
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