第59話 タンデム・マシン
異世界に転移した際に俺達に宿った摩訶不思議な力である『
たとえば俺の【SF】や柚希乃の【
一方で、綾の【蔵屋敷】や百合先輩の【転送】、
これについて俺は前者を「異能系」、後者を「現象系」と名付けたが、おそらく両者の違いには魔素の動きの特性の違いがあるのだと思われる。
「現象系」は時と場合にかかわらず一定の効果や作用を現実世界に及ぼす『恩寵』だ。当然、魔素の動きも基本的には定まったものとなってくる。
それに対して「異能系」は、『恩寵』を発動する対象や時間、距離といった諸々の条件によって得られる効果は実に様々だ。そして「
とはいえ、それでも『恩寵』の
その名も「Sドライブ」。未来を希望の光で照らす人工の
原理としてはこうだ。まず、綾の【蔵屋敷】を「
一見すると単純な仕組みだが、これを実用化するには実に多くの実験と研究の試行錯誤が必要だった。俺だけじゃない、皆の協力がなければ不可能だった技術だ。色々な『恩寵』を持ち、かつ各々が優れた才覚と熱意を持っていたからこそ生まれた「Sドライブ」。この小さな太陽は、きっとイザナ皇国に夜明けをもたらしてくれるだろう。
そしてこの「Sドライブ」を開発したことで実現したのが、「
まずは武装だ。
無尽蔵に近いエネルギーが供給できるようになったことで、電力源に課題のあった携行型レール
その口径は一二〇ミリ。現代西側戦車の主砲と同じ大きさである。砲弾には
また、装甲車に採用していた三五ミリレール機関砲を副武装として搭載することで、使用弾薬に互換性を持たせてある。生産ラインを圧迫しないための必須要素だ。
これに加えて、高出力のレーザーによる自動迎撃装置も新たに開発、搭載することにした。敵の砲弾(この世界に存在するのかはわからないが、どうやら銃はあるっぽいので大砲ももしかあるのかもしれない)くらいなら簡単に迎撃が可能だ。もちろん兵士が着ている金属製の甲冑なんかも余裕で貫通できる出力である。これで多対一の戦闘も怖くない。
続いて装甲面だ。
これには以前開発した単分子ワイヤーソードの技術を応用した「単分子装甲システム」を採用した。アダマンタイト超合金(タングステンや魔鉄などを用いたファンタジー金属由来の合金だ。超硬いぞ!)や特殊カーボン素材、セラミックなどで構成されている機体表面を単分子素材で被覆することで、現代戦車の複合装甲を遥かに上回る防御性能を実現することに成功した。
機体を覆うほど広面積の単分子化を維持するにはそれなりのエネルギーが必要だったが、これもSドライブの搭載によって常時展開が可能となっている。この世界での実在がまだ確認できていないドラゴンのブレスであったとしても、この単分子装甲を貫くことは不可能に違いない。
お次は推進機関。
ジェット機以上の推進力を持つこのプラズマジェットエンジンが実現した機動性能は、それを制御するだけでも一苦労だ。いくら【SF】で創造したものならばある程度の操縦バフがかかるとはいっても、流石に限界はある。
そこで役に立ったのがアイシャの【操縦】を学習した「機体制御プログラム」だ。これの開発にあたっては眞田がいかんなく【プログラマー】としての実力を発揮してくれた。おかげで開発者の俺であればなんとか操縦が可能な程度には、機体制御の難易度も下がっている。
なお、この機体制御プログラム無しでも操縦できちゃいそうなアイシャであるが、彼女には既に空軍でのハイパーゼロ部隊隊長という役目があるので、
最後に搭乗者だ。
実はこの
そして攻撃担当が————
「【
我らがイザナ皇国軍が誇る最強の狙撃手、叶森柚希乃だ。
この
「やっぱり沖田君と叶森さんが乗ってこそ、皇帝の権威が強まるというものね」
そう言うのは紗智子先生だ。彼女は直接開発には関わっていないが、最後の起動シークエンスには俺の遺伝情報が必須であると強硬に主張していた。
その理由としては、まず国家の要である戦略兵器なのだから、皇帝以外の人間が勝手に起動できては安全保障上のリスクになりかねないというのが一つ。
もう一つが、最強の兵器を運用できるのが皇帝(あるいは皇帝が許可した人間)だけのほうが、皇帝の権威向上に繋がるからという点である。
両者ともに実に納得できる理由だったので、俺は眞田と協力してSドライブ起動時の鍵に俺の遺伝情報を組み込むことにした。なお、既に死んでいる俺の細胞ではSドライブの起動は不可能である。落ちた髪の毛とかで他人が起動できたら困るからな。
そんなこんなでイザナ皇国は、
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