第58話 誕生! 『機甲騎士』
————補給が要らず、どんな場所でも戦えて、存在するだけで抑止力になるほどに強い。
この防衛省もびっくりのトンデモ要求水準をすべてクリアする
当たり前だが、核融合炉というものはとても大規模な設備である。【SF】などというチート級の異能を使って作った核融合炉とて、それは例外ではない。
核融合ではなく核分裂を利用した原子力発電であれば、最近になってようやく小型化の目処が立ってきたらしいが……地球型惑星の環境下ではありえないほどの超高温空間を生成・維持し続けなければ稼働自体がままならない核融合炉は、その原理上小型化が不可能なのだ。
だが俺はそれを成し遂げなければならない。
不可能を可能に変える。
今までにだって何度もやってきたことだ。絶対に助からない状況から脱して、ここまでの都市を、国を、仲間達と一緒に創り上げてきた。
技術的に不可能と思われた限界点だって工夫を凝らして乗り越えてきた。
ならば、これからだってできない理由はあるまい。【SF】はそれを可能にする力を持っている。俺はその力を使いこなす可能性を秘めている。
やろう。やってやろうじゃないか。俺は、仲間と一緒に最強を創るぞ。
「柚希乃、綾、アイシャ、眞田、百合先輩。巨大人型戦略兵器の実現には君達の力が不可欠だ。協力してくれるか?」
柚希乃の発想力や綾の冷静な視点、【蔵屋敷】の異能に、アイシャの操縦に関する知見、眞田のプログラミング技術、————そして百合先輩の【転送】。いずれも欠かすことのできない重要な要素だ。
「もちろんだよ」
「進次先輩が更に強くなるためですからね。協力は惜しみませんよ」
「進次センパイがもっと強くなったら、イザナ皇国は更に安全になるしね~」
「拙者も全力で沖田氏をお支えいたしますぞ!」
皆が頷いてくれる。皆ここまで困難を共に乗り越えてきた仲間なだけあって、とても力強い。そして最後の百合先輩だが……
「ぼ、僕なんかで力になれるかな?」
「百合先輩、この前言ったじゃないか。先輩の力は使い方次第では最強に化けるダークホースなんだって」
そう伝えると百合先輩は少しだけ逡巡していたようだったが、グッと拳を握ると顔を上げて力強く言ったのだった。
「……うん、わかった。僕にできる限りの協力をするよ」
「ありがとう」
さあ、これで開発に必要なメンバーは揃った。あとは機体のコンセプトを練って、実際に作ってみるだけだ。
*
「眞田、これを見てくれ」
「沖田氏。これは……何かの素粒子ですかな?」
「ああ……流石だな。これは『恩寵』発動時の魔素の流れを観測したデータだ」
「なんと! いつの間に魔素を直接観測することが可能になっていたのですか!? 流石は沖田氏ですぞ」
「世辞はいい。それよりもこれ……もし仮に外部から魔素に直接干渉して流れや濃度を制御できたとしたら、疑似的に『恩寵』を再現できると思わないか?」
「沖田氏……さてはレオナルド・ダ・ヴィンチの生まれ変わりか何かですかな?」
「まさか。俺は数学の苦手なただのSF好きのド文系だぞ」
「ではガリレオですかな。はたまたアルキメデス?」
「歴史上の偉人から離れてくれ。……でだ。話の続きに戻るぞ。実は魔素に直接干渉する目処は既に立っているんだが、肝心の制御システムが未完成なんだ。————そこで眞田。君にこの疑似『恩寵』発生システムの制御プログラム開発を任せたい。できるか?」
「……ふ。拙者を誰だと心得ておいでか?」
「頼もしい返事だ」
*
「綾、【蔵屋敷】の性能限界について調べたい。最大限危険はないように気を付けるから、少し検証に協力してくれないか?」
「もちろん良いですよ」
………………。
………。
「ふむ、初期に比べてかなり【蔵屋敷】の容量が増えたな」
「まさかドーム球場と同じくらい広いとは、自分でも思ってもみませんでした」
「亜空間の強度もほぼ無敵だな。これならたとえ内部で核爆発が起ろうが、綾も含めて外の世界にはまったく影響がなさそうだ」
「これはかなり有用な発見でしたね。応用の幅が広がりそうです」
「ようやく完成に漕ぎ着けた『
「そうですね。少しでも良い
「ああ、助かるよ。『
「責任重大ですね」
「はは、そうだな。まあ気負わずに頑張ってくれたら嬉しい」
「ええ。任せてください」
*
「大島氏! 今の動き、もう一回できないでござるか!?」
「え~っ! 今のけっこーキツかったんだけど!?」
「重い機体に充分以上の機動性を持たせるためにも、姿勢制御の記録をもう少し詳細に取りたいのでござる!」
「アイシャ、すまんが頼まれてくれないか。後で好きな乗り物を創ってプレゼントするから」
「えー? じゃあヨコハマ重工の『サムライ一一〇〇』がいいな!」
「ササキの『オオタカ一三〇〇』じゃなくていいのか?」
「あたしはヨコハマ派なんだよね~」
「そうか。ちなみに俺はヤマノハか、モトダが好きだ」
「そっちも割と好きだよ?」
「じゃあ機会があれば今度そっちも作っておくよ」
「いやったぁ! あたしもう少し頑張る!」
「大島氏は単……素直ですな」
「なんか言ったー!?」
「い、いや、何も言ってないですぞ!?」
*
「そうだ! 百合先輩、その調子……そう、その感覚! おい、柚希乃! いま出力どのくらいだ!?」
「九.五……いま一〇ギガワットを超えたよ!」
「よし、充分実用に耐えうる水準だ。……いや、それどころかレール
「す、凄い……僕の【転送】にこんなことができるなんて……」
「何を言ってるんだ。百合先輩が頑張って【転送】をここまで強化してくれたからできたことなんだぞ。間違いなく先輩はMVPなんだから、もっと自信を持ってくれ」
「そ、そうかな? えへへ、なんだかちょっと嬉しいな……」
「やったね、進次! これで後は疑似【転送】システムを構築すれば念願の
「ああ。そうしたら駆動系と装甲の開発に取り掛かれるな」
「完成は間近だね」
「俄然楽しみになってきたぞ」
「夢のロマン兵器……本当に実現できそうな気がしてきたよ」
「ああ。完成まであと少し。気を抜かずに開発を続けよう」
*
皆の協力を得ながら研究開発に勤しむ日々を送り。一週間、二週間、やがてひと月が過ぎ、真夏の日差しも幾分か和らいだ初秋の頃。
「で、できた……」
「できちゃったね……」
「で、できましたぞ……」
「「「「「「うおおおおおおおっ!!」」」」」」
「や、やったあ!」
————落ち着いた深いマットグリーンの装甲。ガッシリとした魔鉄炭素鋼製の骨格。戦車砲もかくやといわんばかりの大口径レール
全高一一メートル。総重量一八トン。イザナ皇国の技術を結集した最強の戦略兵器『
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