帝なる将を穿つ駒

あさひ

第1話 飛のような姉 歩のような弟

 パチンとなる音が心地いい

そう思い始めたのが盤上に認められた日かなと

誰かが言っていた。

 朝から木と盤が弾かれる音がする

なぜか憑代家では当たり前

しかし何よりも珍しい点が一つだけ

ラジオからもテレビからもパチンパチンとすごく鳴っている。

「じいちゃん? 変な花火でもしてるの?」

 髪が短くまだ年端も行かない男の子が

瞼を擦りながら問いかけた。

「うん? 将ちゃんかい……」

 目で合図しながら男の子に

盤に視線を促す。

「しょうぎ?」

 静かに頷くともう一つだけ問ってきた。

「次の駒は将ちゃんが決めていいよ」

 小声ながらしっかりと聞き取れるくらいに

そしてわかるように説明を加え

盤を見つめる。

「じゃあ《きんさん》で《とのさま》をはさみうちっ!」

 あまりに勢いよく言ったために

おばあさんにキッと睨まれる祖父は冷や汗を隠さずに

パチンと盤に鳴らさせた。

「まったく……」

「じゃがの?」

「まあそうね…… 将ちゃんすごいわねぇ」

 意味がわからず褒められ困惑ながら

笑って見せる。

 それが幼稚園に入る前で

絶対最強の姉に敗北を重ねる前だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帝なる将を穿つ駒 あさひ @osakabehime

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ