230 『コオペレーション』
士衛組参番隊。
隊長のリラをナズナとチナミが支える、同い年の三人組。
技の数や機動力に長けたチナミには戦術眼もあり、ナズナは空が飛べる上で弓矢を扱える。
リラは描いた物を実体化する《
――本当なら、指揮をするのはチナミちゃんが向いているかもしれない。でも、チナミちゃんの機動力はかなりの武器。
チナミの機動力は前線での働きがあってこそのものであり、指揮官になるのはもったいない。
対してリラは。
――リラにはチナミちゃんみたいな戦術眼はない。だから、《
確かに、リラにはチナミのような戦術眼はない。だが、チナミに劣らぬ視野の広さがあった。
以前は身体が弱く前に出て戦うこともできなかったリラも、今は着ぐるみに入って戦えるが、それ以上に《
それは、戦闘の意味を変えるとも言えるだろうし、戦闘の種類を変えるとも言えるだろうか。
リラはそんなプランをナズナとチナミに発表する。
「さて! 参番隊はこれから要塞を築きます! これはリラが一人で行います。しかし、そのために必要な時間は十秒。だれも階段に踏み込ませないよう、フォローをお願いします」
「わ、わかった!」
ナズナが意気込んで背中の翼から光の矢を抜き取る。
チナミはこくりとうなずいた。
「御意」
それから、チナミはリラにひと言。
「この十秒に作戦は不要。リラは要塞づくりに集中」
「はい!」
キビキビと返事をするリラを見て、チナミはまたこくりとうなずく。
「やるよ、ナズナ」
「うん、チナミちゃん!」
今からリラが描くものがなんなのか、その完成図はチナミにもわからない。だが、チナミはリラを信頼して十秒稼ぐだけだ。
さっそくチナミは近づく敵に手裏剣を二つ投げた。
「《
投げた手裏剣は敵を狙う。
しかしこれをよけられる。
「この程度、余裕だぜ」
「遅いわ!」
だがまたしかし、手裏剣はチナミの手元へと戻っていく。
戻り際、先程これをよけた敵を背後から突いた。
「ぐほっ」
「ッたぁ!」
そこに、ナズナの弓矢が飛ぶ。
「《
これによって、「くかあ」と眠ってしまう。
また次には、チナミが小さな玉を投げていた。
「《
まっすぐ向かってきていた敵たちも、この玉が地面にぶつかると同時に火柱が立ち上がり、恐れおののき足を止めてしまう。
さらに、チナミは真ん中に向かって扇子を舞わせた。
「《
階段から吹き下ろす風には、砂が含まれている。
あらかじめ、火柱を発生させる位置を計算し、階段の左右からの経路を閉じておいた。
そのため、真ん中からそろって彼らは突撃してくる。
そこを狙って、砂塵が吹かせたのである。
しかもこの砂は、ただの砂ではなかった。
「砂か!」
「ちょこざいな!」
「こんな砂ごときで、オレたちがひるむ……にゃむにゃ……」
「ずずず」
チナミの《
これでバタバタと眠ってくれればあとが楽になる。
一方、リラは要塞を築く準備を整えていた。
まずは《取り出す絵本》からとある物を取り出す。
「うん。確か、これ」
小さなそれは、前にリラが描いて実体化したものだった。
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