191 『ランダムドロップ』
エミが持つ《
効果は大まかに言って三種類。
一つ目。
振れば、良いことが起こる。
その効果は一日に三人まで、一人につき一度の良いことがある。
二つ目。
振る際に、「大きくなーれ」と言えば物を大きくでき、反対に「小さくなーれ」と言えば物を小さくできる。
さらに。
三つ目。
今エミがやったみたいに、「なんか出てこーい」と言って振れば、なにかが出てくる。
出てくるものは魔法道具。
しかしランダム。
そのときその人が必要とする魔法道具が出てくる。
魔法道具はエミがこれまでに見たものの中から選ばれるのだが、その魔法道具の詳細を知らなくてもよい。
で。
たった今エミがこれによって出したものが、鏡だった。
「なに、これ……?」
「鏡だな」
ナズナとオリンピオ騎士団長が不思議そうに鏡を見る。
鏡の横には、三つのボタンがついていた。ボタンにはそれぞれ1、2、3と数字が刻まれている。どのような使い方をするのか見当もつかない。
エミが教えてくれるには、
「これは《
「鏡に映したものを、福笑いみたいに動かせるんだ! でも、福笑いだから動かす本人は鏡の中を見られない!」
「隣にいる人が教えてあげるのはいいんだよ!」
「そういうこと!」
胸を張って得意げに説明したあと、二人は顔を見合わせる。
「なんでこれが出たんだろうね?」
「うん。不思議だ」
「役に立つから出たはずなのに」
「どう役立てるかは自分次第だからなあ」
不思議には思っても考えるつもりはないらしい。
そんな二人とは違い、オリンピオ騎士団長とエルメーテとナズナはなにか有用な使い方がないか、悩んでしまう。
「顔のパーツを入れ替えて遊ぶのが福笑いだったか」
「は、はい。せ、
オリンピオ騎士団長もうっすらとは知っていたようだが、ナズナの解説を受けてもエルメーテにはなんにも思いつかなかった。
「顔のパーツを、見ずに入れ替える……わからない。なぜ、今、僕たちはそんなことをする必要があるんだ? アキさんとエミさんが言うからには、きっと役立つと思うんだけど……うーん」
「うーん……」
ロレッタもナズナたちの真似をして首をひねるが、そもそもどうしたものかロレッタにわかるはずもない。
「ナズナお姉ちゃん、どうやってやるの?」
服の裾をつかまれ、そう聞かれる。ナズナはにこっと微笑みかけ、鏡をロレッタに向けた。
「たぶん、こうして……映った」
「横のボタンを押すんだよ」
とエミが教える。
「ボタン……三つ、ありますけど……」
「キャプチャーは1番」
「キャプチャー? 1番は……こう……で、いいのかな?」
ナズナが1の数字が刻まれたボタンを押すと、鏡の中のロレッタが静止した。
「うん。これでキャプチャーされて、パーツを動かせるようになったよ」
「でも、鏡の中を見ながらだとパーツを動かせないからね」
「目をつむるか、目隠しをするといいかも」
アキとエミの説明を受けて、「はい」とナズナが気合を入れる。
ナズナはいつも修業で使っている目隠しを取り出して装着した。目を隠して超音波を発し、物の位置を特定する修業をしていたから、たまたまこんなものを持っていたのである。
「それじゃあ、はじめます」
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