183 『インターメディアリー』
サツキはジェラルド騎士団長の人柄を見て。
――ジェラルド騎士団長は信頼していい。クコとリラには少しでも早く会わせてやりたい。それがジェラルド騎士団長のためにも、クコやリラのためにも、アルブレア王国のためにもなる。
だが、この混乱したマノーラの街ですぐに実現するのは難しい。
――会わせてあげるのはまだ難しくても、サヴェッリ・ファミリーのボスを倒したら……。
そのあとで、場をつくる。
ジェラルド騎士団長の治療をどうしようかと思っていると、ミナトがヨウカンを差し出した。
「これ、魔力が回復するお菓子です。仲間のバンジョーさんって料理人がつくってくださったもので、よく効きますよ」
「あなた方の戦いはまだ終わらない。サヴェッリ・ファミリーを止めなければならないはずだ。我はいただけない」
「そうですか」
ミナトもあっさり引いて、包みを開けて自分で一口食べた。
「うん、おいしい」
「
「なんですかい?」
「グランフォードのこと、いろいろと教えておきたい。だが、それはまたあとでだ。まずは、サヴェッリ・ファミリーについて話しておく」
「助かります」
「そもそも、我々アルブレア王国騎士団は、サヴェッリ・ファミリーとのつながりを橋渡し役に任せていた。正確に言えば、このマノーラにおける通信士がその者だった。我はその橋渡し役・
「
その名前を、サツキは聞いたことがあった。
しかしすぐには思い出せない。
記憶力のいいサツキだが、さすがに一度聞いただけの名前がパッと出てくるほどじゃない。
実は、サツキがこの世界に来てすぐに聞いた名前であり、つまりだいぶ前に聞いた名前なのである。
これに関しては、サツキがクコに話すときに思い出すことになる。
ジェラルド騎士団長は続けた。
「我々は彼から、サヴェッリ・ファミリーとの協調を決定事項として聞いた」
事後報告だったわけだ。
「ブロッキニオ大臣と連絡を取ろうにも、常に彼が間にあった。また、我々アルブレア王国騎士はこの街でこの戦いの中で、即時情報を伝える情報網を持たない。部下たちは最初に出した指示に従っているのみ。そのため、士衛組に降伏したことを伝達できない。それは『
「では、僕たちはこの街にいるアルブレア王国騎士とは戦い続けなければならないのですね」
「ああ。申し訳ないが、そうなってしまう。ただ、我が今ここで書状をしたためれば、我の書いたものと筆跡からもわかる部下には伝わるだろう。最低限、それだけはさせてもらう」
「ええ、お願いします」
十全な制御は叶わずとも、避けられる戦いはあるだろう。
サツキとミナトとしてはそれで充分だった。
今度はサツキが尋ねる。
「あの。サヴェッリ・ファミリーについて、ボスのことはご存知ですか?」
「いや。それも
「そうですか。まあ、僕らは相手のボスを倒すつもりですし、構いません」
ミナトが答えると、ジェラルド騎士団長が問うた。
「時に、誘神湊。聞きたいことがある」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます