182 『コンテニューインエフェクト』
ジェラルド騎士団長が目を覚まして最初に見たのは、赤く強烈に輝くサツキの左目だった。
血よりも鮮やかな深紅が閃光を吐くようで、目をそらせない。
この左目を見て、ジェラルド騎士団長は悟る。
――やはり、この左目を警戒したのは正しかった。そして、やはり……我は負けたのだな。
徐々に身体の痛みを感じてくる。
あれだけ派手に斬られて打撃も受けたのだ、当然の痛みである。
しかし、痛みもなぜか心地よい。
――これだけ全力を出して負けた。だからか、スカッとした。彼らの強い意志を見られたからか、彼らを気に入ったからなのか。まずは話を聞こうじゃないか。彼らに従うしかないのだから。
サツキの顔を見て、ジェラルド騎士団長は口を開いた。
「
「もちろんです」
こうしてサツキは簡潔にクコとリラについて、そして士衛組についてを話していった。
話を終えたところで、ミナトが聞いた。
「めでたしめでたし。だけど、サツキはどうしてそんな魔法を使えるんだい? 玄内先生の魔法じゃなかったかな」
「《
うん、とミナトはうなずく。
「あれは先生に教わって修業して身につけたんだ。ヒナも先生の《
「じゃあ、蘇生に利用したのも?」
「電気ショックの利用は今思いついた応用で、成功するかはわからなかった」
サツキの正解にはAEDというものがあったからこその発想だが、これに関する説明は省いた。
アシュリーは横で「すごい……」とつぶやく。
「我も一つ、いいだろうか」
横になっていたジェラルド騎士団長だが、身体を起こして、サツキに顔を向けた。
「城那皐。あなたはもう戦えないほどのダメージがあったと思う。それが回復したのは、左目の力か?」
「左目には、確かに傷を修復する機能があります。これは自動的な機能です。だから、あなたの《
「それで、思った以上のパワーが出たわけか。二段階のインパクトとでも言えるだろうか。納得した」
完全にしてやられた、とジェラルド騎士団長は思った。
――あの左目はオート回復するもので、司令を出す必要がなかった。だから、身体から離れた場所にあっても回復をしていた。ただし、身体から離れているから魔力の供給が遅れて、回復には時間がかかったのだ。
魔力は世界樹から流れ出て、人々はそれを受けて人体の中にある回廊から魔力を取り入れ、あるいは蓄積し、魔法を使えている。だから、魔力の発生源は身体の中の心臓や脳などではないのだ。身体から離れてもオート回復機能が働くことに、なんら不思議はなかった。
今度はアシュリーがおずおずと問うた。
「わたしからもいいかな?」
「はい」
「最後、ジェラルド騎士団長の乱れるような剣撃で、サツキくんはすごいダメージを受けたと思う。あんな剣を受けたら致命傷だよ。なんで大丈夫だったの?」
「俺の帽子は、あらかじめ設定しておいたものを自由に、好きな場所に出し入れする効果があるんです。これで、脇腹を刺される直前にクッションになるものを出して身を守っただけです。それでも、完璧な防御なんてできませんでしたけど」
そう言って、サツキは盾を出現させた。
盾は晴和王国の武将が身につける甲冑を模したような形で、しかしながら丈夫そうな材質にもかかわらず胴の部分が砕かれている。
「実は、ルカもこんな盾を持っていて。先生が創ってくれたものなんです」
所有権を持つ物体を自在に《お取り寄せ》できるルカならば、サツキ以上にうまく活用できる。
それはミナトにはよくわかった。
――さすがはルカさん。きっとうまく扱うんだろうなァ。
だが、サツキは種明かしをしながらもここでは黙っていることもあった。
――実は、ルカ同様この盾は分離式。だから、今出現させたこれが盾のすべてじゃないんだけど。これは言うこともないか。
出していないパーツもある。
それはいくらジェラルド騎士団長が今後敵対することもなく味方になってくれるにしても、相棒のミナトにも、あえて言う必要もないことだった。
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