161 『ウォッチベリーエンド』
大剣、バスターソードに魔力が集まった。
むろん肉体のすべての魔力を一極集中させたわけではない。全体の五分の一ほどだろうか。だが、《
サツキの緋色に光る瞳は、そうした魔力の動きも目に見えている。
「次からは《
「御意」
ミナトは答えると、駆け出した。
同じく、サツキも地面を蹴った。
迫る二人に、ジェラルド騎士団長は剣を構えて待つ。
素手で駆けてくるサツキと刀を右手に持って走るミナト。
その構図はそのままサツキがジェラルド騎士団長にグローブで触れることでミナトにかけた《
ジェラルド騎士団長はその点も抜かりなく備え、二人を引きつける。
引きつけて引きつけて、ギリギリまで待ってから剣を振るっても、ジェラルド騎士団長の豪速はサツキ程度には追いつく。ミナト相手でも、片腕のもがれた神速には及ばないこともない。
やがて。
突然、サツキの手の中に刀が現れたとき。
この剣とジェラルド騎士団長の距離は一メートル圏内にあった。
剣先はまだジェラルド騎士団長へと向いておらず、ここから斬りつけるか突くように動くはず。
だがサツキの動きは不意を突いても豪速には届かない。
一度これを無視して、ジェラルド騎士団長はミナトの剣に注意を払う。
「はああ!」
サツキの動きは、斬りつけるものだった。
――余計に遅い。
振りかぶる分、余計に動きが必要になるためだ。
――突くだけならコンマ一秒は速く届いたものを。
そう思ったところで、今度はミナトが剣をやや引いた。突き出すための動きだろうか。
それはやはり、突きだった。
「《
ミナト得意の三段突き。
ただし、そこには《瞬間移動》の下ごしらえがあり、ジェラルド騎士団長から見て右の真横からの攻撃となっており、ここまで来ればもう判断に迷うこともなかった。
「ゼアァァ!」
正面にいるサツキに対して、中段の構えを取っていたジェラルド騎士団長。
ここから剣を傾かせて斜めに振り、右手へ流すように斬ればいい。サツキの左目を斬った上で、右側にいるミナトも処理するのだ。
――まずはその左目、もらった!
この剣が速かった。
豪速だった。
サツキの《緋色ノ魔眼》は動体視力も著しく高まっている。しかも重心の移動や筋肉の動き、さらには魔力が見える。魔力はこの魔法世界の人間が意識せずとも使う力であり、より大きな肉体のパワーを引き出す際にはこの魔力が無意識にも使われているのだが、腕力なら腕に、ジャンプ力なら足にというように魔力は身体を巡り爆発力を出すそのための場所に集中されてゆく。
だから、サツキは動体視力と重心、筋肉の動き、魔力の流れから、これまでは相手の動きを推測してこられた。
しかしジェラルド騎士団長は魔力ならば《
したがって、サツキがジェラルド騎士団長の行動予測を立てるのは彼の動き出し直前になる。
「っ!」
サツキは左右の目を大きく見開く。
そして、目を閉じて剣を帽子の中へと一瞬で収納し、ただまっすぐに拳を前に突き出した。
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