156 『ソードアンドシールド』
左肘がくりぬかれたようになくなり、動かせなくなったが、指は動かせる。それでも左手で剣を振ることはできない。
しかも、その左肘がジェラルド騎士団長の支配下にあることで、ジェラルド騎士団長の思うままにコントロールされてしまう危険性がある。
ジェラルド騎士団長にどこまでの権利があるのか、現状では読めない。
もう一つ。
ミナトが不安視しているのは。
パワー負けしないか、ということだった。
――ジェラルド騎士団長はあの大きなバスターソードを使う。元々、パワーでは勝てない。それを速さと剣術で補ってこその勝負だった。でも、左手が使えなくなった今、右手だけでパワーに対抗するのは厳しい。
カバーしきれない。
やはり、サツキとの連携が肝になりそうだ。
サツキは言った。
「その無敵状態は、この戦いで使わなくていい。ここからは俺も前線に立つ。二人で倒すぞ」
「頼もしいね。それで、サツキ。作戦は決まったかい?」
「いや。まだだ」
「まあ、急ぐこともない」
「ああ。とにかく二人でぶつかるぞ」
「うん」
サツキが刀に手を伸ばす。
そのとき。
もう、ミナトは抜刀していた。
さらに《瞬間移動》もしており、剣尖はジェラルド騎士団長の肩口にするりと伸びて。
バスターソードが驚異的な速さで防御した。反応速度も尋常ではないが、重たい剣を高速で動かす技も、強引なまでの力業だった。
ジェラルド騎士団長は大剣・バスターソードから顔を覗かせ、ミナトに言った。
「戦略もなしに、我に挑むか。命知らずだ。それも、その程度のパワーで我に対抗しようとは。抜き打ちならいけると思ったか」
「いやあ、速さが取り柄なもので」
パワーで押し返そうとしたジェラルド騎士団長に、ミナトはまた《瞬間移動》で引いて背後から斬りかかる。
しかしこれもバスターソードを背中に回すことで防御する。ジェラルド騎士団長に隙はない。
剣を両手に持ち、下げ、ジェラルド騎士団長へと駆けるサツキ。
正面のそれを見て、ジェラルド騎士団長は眉根を寄せた。
「
「グランフォード総騎士団長をよくご存知なんですかい?」
ミナトは、右手の力だけでバスターソードを押し、力比べする。しかし、こんな体勢で、かつ右手だけで受けているジェラルド騎士団長だが、力比べの結果は目に見えていた。
パッと消え、今度は上空から剣を振り落とし、バスターソードの軌道を見てまた消え。
次には下に現れ、横に一閃。
さすがにこれには追いつけないと思われたが、腰にあった小さな盾がこの一刀を受けた。
そして、ミナトの問いに、ジェラルド騎士団長は笑いもせず鼻を鳴らした。
「我はあいつと競い合い、共に王家のために力を尽くすと誓い合った。最強の盾であるあいつが王家の側で王家を守り、最強の剣である我が国から離れあらゆる脅威を払いのける。そうして国を守ると誓ったのだ」
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