145 『キャッスルセキュリティー』
バンジョーは戦闘を得意としていない。
それでも玄内の指導により戦えるようになっており、それに組み合わせてグラートの魔法もあれば、ロマンスジーノ城への襲撃は防げるものだった。
グラートはまず、バンジョーに忠告した。
「サヴェッリ・ファミリーが城に襲撃してきました。気をつけて参りましょう」
「押忍! じゃあ外に……て、なんでわかるんですか!」
素っ頓狂な声を上げるバンジョーに、グラートはニコリと微笑む。
「私の魔法です。異変があればわかるのです。このモノクルでね」
「うおおあ! いつの間にモノクルなんてしてたんですか!」
「今さっきです」
続いて、グラートはベルを鳴らした。
「ん?」
バンジョーがじぃっと、グラートの手にあるベルを見る。穴が空くほど見つめている。
「……少し近いのですが」
「す、すんません! で、だれか呼ぶんですか?」
「音を鳴らして警告したのです。今、大きな音が城の前で鳴りました。この音で撃退できればよいのですが、彼らは少しひるんだ程度なので、打って出る必要があります」
「そんなことしたんすか! でも、急がないとッスよ!」
「大丈夫です。ワタシの魔法は結界、つまりバリアを展開しているのですから。その対策に結界破りを得意とする相手がいるかもしれないので、そこが問題ですかね」
「グラートさんの魔法か! すげー!」
「《
「そうみたいッス。先生がそう言ってたんで」
「私の《
「ほえー!」
これだけ言ってもぼけーっと懐中時計を見つめるばかりのバンジョーに、グラートは申し出る。
「そこで、魔力の内包量の多いバンジョーさんに、魔力を込めていただきたいのです。よろしいでしょうか」
「もちろんですよ! オレ以外にだれがやるんすか!」
「ありがとうございます。では、これを手に持って、手に魔力を集めるイメージで」
「うおおおおりゃあああ!」
「そんなに強く握らなくてもいいのですが……」
「はあ、はあ……」
バンジョーは肩で息をして、
「なんか力が抜けてきたんですけど」
「まさか一瞬でここまで魔力を込められるとは、驚きました。こちらを。バンジョーさんがつくっておられた《
「ども」
おまんじゅうを受け取ってひょいと口に放ると、バンジョーはすぐに元気になった。
「おおお! ちょっとだけ魔力が戻ったぞ!」
「それはよかったです」
いつまでも悠長に構えるグラートに、バンジョーは敵がいることを忘れてしまっていたが、不意に我に返って問うた。
「そうだ! それどころじゃないッスよ! 敵が来てるんスよね!? オレはバリアに入れないでいるヤツらをぶっ飛ばせばいいんですか?」
「ええ。そうなりますかね。ただし、最初に狙うべきは結界破りをしようとしている者です。そこさえ押さえれば、城の防御が敵の侵入を許しません」
「押忍!」
「では、参りましょうか」
「どこですか?」
「正面玄関です」
「了解です! 先に行きます!」
バンジョーが駆け出した。
しかし、正面玄関前に来ると。
バンジョーは敵とおぼしきマフィアのような六人がたむろしているのを見つけるばかりで、彼らが結界を壊そうとなにかしている様子から、まだ結界が無事なことを知る。
ゆったりとした足取りで、グラートも追いついた。
「私の防衛結界はまだ破られていませんし、今のうちに反撃と参りましょう。バンジョーさん」
「押忍!」
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