122 『リバーサルソード』
サツキとフレドリックの剣撃が乱れる。
フレドリックは《
――いくら仕掛けがわかっても、これに対応するのは……。
計算だけでもなく。
感覚だけでもなく。
精神だけでもない。
――あらゆる神経を使う必要がある。その上で、俺には剣術がもっとも足りない。
しかし拳で戦うにはリーチが怖い。
――ただでさえ拳ではリーチという点で剣に遅れを取るのに。それを常人にはできない範囲で活用するフレドリックさんを相手に、拳で挑めるはずもない。拳を使うのは、ここぞという時だけだ。
溜めた魔力を《波動》に変え、《波動》を無駄なく最大出力で使えるタイミングを作り出さなければならない。
それはつまり、サツキが隠し球を使うとき。
魔法を解除するときだ。
サツキは何度目かになる剣を受け。
――そろそろか。
狙いを見定めて。
――今だ!
剣を振るモーションの中で、刃を触る動作を差し込む。
ごく自然に。
なんの狙いもないかのように。
まるでなにも悟らせずに。
振った。
サツキの刀は鋭くフレドリックに斬りかかり、反対に、フレドリックの剣は大きくなることもできずにリーチを見誤ったかのような空振りをする。
慌てて左の手首の盾を創ろうとするが、それもかなわなかった。
発動しない《
一方で、サツキの刀はフレドリックを正面から袈裟に斬った。
――やった!
ダメージは大きい。
血が噴き出す。
フレドリックは自身の魔法が発動しなかったことと思い切り斬られたことで面食らい、追撃を許した。
サツキは溜めた魔力を拳に集めて、《波動》の一撃を繰り出す。
――この一撃で決める!
拳を突き出した。
「はああああ! 《
だが。
この拳は素直にフレドリックへとは届かなかった。
銃弾が飛ぶ。
ジェンナーロがフレドリックのピンチにいち早く反応し、援護射撃をしてきたのだ。
正拳突きの挙動に入っていたサツキは、拳を引けず、軌道をずらしてなんとか銃撃をよける。
魔力を可視化できる瞳も、今は魔力しか見えていない。銃弾には魔力もないから、サツキはジェンナーロの手の形から銃弾を予測しかわしたのである。
また。
その発砲音はフレドリックを我に返し、彼の身体を戦闘体勢に戻す効果があった。
「まだか……っ!」
決して浅くはない傷を負ったフレドリックだが。
まるで痛みなどないかの如く、フレドリックは剣を振った。
「当然、まだ終わらない! 終わらせない!」
剣の腕だけで勝負をするのなら、サツキも引けを取らないだろう。
しかも相手は手負いだ。
――もう一撃と加えずとも、動くだけで傷は開く。外野の銃撃に警戒しながらでも、今のフレドリックさんには負けない!
さっき与えた一撃はそれほどに大きかった。
意味として大きかった。
だから勝ったと思った。
サツキは慎重に剣を受け、そして振った。
さらに魔力を高めて次の一撃に備えようとしたとき、それは起こった。
一切の油断もない、警戒も行き届いた状態だった。
それなのに。
「はああ!」
「れあッ!」
フレドリックの剣は拡大し、サツキの肩を突いた。
「……うっ!」
思わず悲鳴が漏れる。
――二メートルより遠いのに……。魔法だって、解除したのに……。
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