109 『フェイスフル』
リョウメイが柄にもなく親切心しかないようなことを言うと。
答えるためか、リラは立ち止まった。
これを警戒かと感ずるリョウメイ。
しかしそれはリョウメイが危惧するような理由ではなかった。むしろ、真面目なリラらしい理由だった。
ぺこりと、リラはお辞儀したのである。
「ありがとうございます。勉強になりました。それと。わたくしも、リョウメイさんを大切な友人だと思っています。今回助け合えたからとかじゃなく、わたくし自身はいつでもリョウメイさんの力になりたいとも思っています。だから。これからもよろしくお願いますね、リョウメイさん」
またリョウメイは笑った。
「眩しい笑顔やなあ。ほんま、かなわんわ。ミナトはんもそうやし、どこまでも眩しい子たちやで」
リョウメイが最後にリラを見たのはもう半年前だったか。
――なんや、旅で逞しくなってるんやろうなと思っとったけど、こんなに素直にまっすぐ、眩しいくらいにまっすぐ強くなるもんなんやな。前はずっと不安そうにしてたもんな。
初めてリラを見たとき。
リラはたったひとりで王都の街を歩いていた。不安そうな顔で、不安そうな足取りで。
急に声をかけたリョウメイのことも当然警戒していたし、王都少女歌劇団『春組』に入って歌って踊ってくれと頼んだときも、ひどく不安げだった。
それから心を開いてくれたかどうかもよくわからない。いや、きっとそれほど時間も経たず、『春組』のメンバーを見てリョウメイの言葉を信じてくれた。舞台を通して信頼もしてもらえるようになった。
王都での数日を経て。最後にリラと別れたとき、短期間でリラはほんの少し大人になったようにリョウメイには思われた。
だが、この半年でもっと大人になった。あの頃からよく成長したものだと感じる。
――《
優しさや素直さそのままに、伸びやかにまっすぐ大きくなった。人を信じるその素直な心は、リラが強くなった証だろう。
「そんで。リラはんやミナトはんと違うて、サツキはんは人一倍警戒するくせに律儀で正直で義理堅い。士衛組はおもしろい人間の集まりやな」
「ふふふ」
リラも楽しそうに笑った。
「褒められたと思っていいですか?」
「それくらい茶目っ気で返してくれると助かるわ。とにもかくにも、うちは今回リラはんの横で見物させてもらうけど。決断の良し悪しくらいなら、怪異的な視点で教えるくらいはさせてもらうで。適当に聞いてな」
「はい!」
そしてリョウメイはうんとうなずく。
――どっちにしてもうちが……いや、スサノオはんも、ミナトはんには敵対するわけがあらへんねやけど。
ただの義理では足りない理由がある。だからミナトに敵対など絶対あり得ない。しかし、士衛組が鷹不二氏の管理下に置かれるようなことがあれば、戦わねばならないケースも出てくるかもしれないのだ。
――鷹不二氏と対立する上で、ミナトはんと間接的にでも敵対することになれば大問題や。そうならへんよう、手回しはしとかなあかんみたいやな。そういう意味で、今回が士衛組をかけた鷹不二氏と碓氷氏の最初の対決になりそうや。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます