108 『トゥルーフィーリング』
リョウメイはちょっとしたお節介で、リラに大局的な視野に立ったときに見える話をしてみることにした。
「スサノオはんは恐ろしく頭が切れるときもあるんやけど、基本的にシンプルや。碓氷氏では権謀術数を巡らせるのなんてうちだけやな。ただ、鷹不二氏は違う。あそこはうちかそれ以上のくせ者、『茶聖』ヒサシはんがおる。『少年軍師』ミツキはんもよう切れる。うちがもっとも警戒すべき『
「みなさん、優しそうな方でしたが」
くっ、とリョウメイは笑った。
「さすがにヒサシはんはどうやってもタダのいい人には見えへんやろ」
「え、ええと……」
リラも正直でつい言葉が詰まってしまう。
「それはともかく。いい人かどうかやない。士衛組を好く思っているからこそ、士衛組を抱き込みたい。士衛組を未来仲間にしたい。そのために、恩を売りつけておきたい。打算はあれど善意で動く。善意で動くが打算が隠れされてる。そう考えてみれば、おかしな話やないやろ?」
「なるほど。そうかもしれません」
「うちも士衛組とは仲良うしておきたい。もっと言えば、鷹不二氏にだけは取られたくない」
「取られるというと、どういう意味になるんでしょう?」
「士衛組はな、本人たちが望むと望まんとにかかわらず、大きな組織になる。もちろん、今日このマノーラでの戦いに勝つことは絶対やけどな」
「組織の大きさは、存在感や注目度としての規模、ですか」
「せや。人数が爆発的に増えるって話やない。士衛組がどれほど続く組織かも明確には《
「リョウメイさんもそう思ってらっしゃるんですか?」
あまりにリラが素直な反応をするので、リョウメイはおかしいを通り越して本音を話す気になった。
「当然や。うちかて、リラはんをうまあくコントロールして恩を売りつけておいて手中に収めておきたい気持ちもある。ただまあ、うちは《
意外なほど、人がいいことを言っていながら、それがリョウメイの嘘偽りない本音でもあった。それがまたリョウメイ自身にとっても意外だった。
――あかんなあ、ついタダのいい人みたいなこと言うてしもうたなあ。いい人過ぎてかなわんわ。リラはんも変に警戒したやろか。
そう思ってリラを見る。
リラはピタリと足を止めた。
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