76 『ナイトエルフ』
「神速? そっちはどうなって……」
騎馬とランスで敵を一人倒したフィリップが振り返ると、横たわった数人のマフィアがいた。
「驚いたな。銃を相手に剣だけで、しかもこの一瞬で……」
もうこの近くにサヴェッリ・ファミリーのマフィアはいない。みんな倒れ伏している。
ミナトはゆるりと手を伸ばして、魔獣を撫でた。大きな牛のような体格に、硬質な皮膚を持っている。
「すみません。僕らの敵を相手してもらって」
「それはいい。我々はマノーラのために戦ったのだからな。それより、こいつらの話では『
「僕もまだ状況把握が完全ではなくて、『
と、ミナトはフィリップとラーフに話をした。
話を聞きながらも、ラーフはミナトが魔獣を撫でてじゃれているのを見て、
――こいつに気に入られてる人間はそうそういない。
と思った。
そして、話を受けて、まずフィリップが協力を申し出てくれた。
「そうか、話はわかった。マノーラの敵みたいだから戦っていたが、そういうことなら我々も本格的に戦おう。ラーフ、いいか?」
「ああ、協力しよう。私は、コロッセオでは森の生き物たちのために戦ってきた。だが、私にとってこのマノーラがどうなってもいいわけじゃない。そして、キミのことは信頼できると思った」
ラーフはエルフであり、エルフは普段あまり人前に姿を見せない。人間嫌いの者もよくいると聞いたことがある。
だから彼らの申し出が、ミナトはうれしかった。
「ありがとうございます。僕は僕で戦わなければなりませんし、仲間とも合流したい。別行動になりますが、なにか聞きたいことはありますか?」
「いや、キミが知っていることはもう話しただろう? ならば、大丈夫だ」
「連絡する手段もなさそうだし、時間を忘れて戦い尽くすとしよう。やがて、キミたちが終わらせてくれると信じて」
二人の言葉に、ミナトはぺこりと頭を下げた。
「お願います。一応、次にリディオくんが連絡をくれたらお二人が協力してくれるようになったことを伝えます。そしたら、なにかあった際にリディオくんから連絡があるかもしれません」
これに対して、
「どう連絡があるんだ?」
フィリップが疑問を投げた。
ミナトはリディオの魔法の詳細は伏せて答える。
「頭の中に直接声を届ける魔法があるようで、それで連絡があるんです。会話もできます」
そんな説明をしたあと、ミナトはフィリップとラーフに別れを告げ、また一人で行動を開始した。
ただ歩く。
歩き続ける。
そうすることでしか、ミナトにはなにも見つけられない。
だから歩くしかなかった。
しかし敵を見かけることもなく、味方と再会できるわけでもない。
「人の通りは未だある。騒々しいくらいの異変が起こる街では、煩いのは当たり前だ。でも一人だと、静寂を感じるね。僕一人しかいないってわかるからかなァ」
つぶやきさえ、風に溶けるようだった。
今度は、アルブレア王国騎士がいる。
たったの二人だが、敵を探す瞳はギラギラして、ミナトを見つけるのも早かった。
「やつは
「『ゴールデンバディーズ杯』優勝の絶頂から堕ちるところまで堕ちてもらおうか」
ミナトは彼らの声を聞き、足を止めた。
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