62 『オルターサウンド』
オウシがマフィア二人を倒したとき、チカマルは別のマフィアを相手にしていた。
とはいえ、チカマルがすることはただのマノーラ騎士団のサポートだ。彼ら自身も気づかないところで、マフィアたちをコントロールする。
影の仕事ゆえ、チカマルは静かにオウシの戦いもよく見ていた。
――ナイフなどを通して間接的にでもオウシ様に触れた者は、《波動》の力を直に受けることになる。《波動》とは波状の魔力であり、震動を伝達されるようなものだから、オウシ様程の力があれば、たったこれだけでのことで相手を気絶させることなどいともたやすい。
むしろ、オウシの力のほんのわずかしか使わない戦い方なのだ。
――技など使わずとも、オウシ様ならば触れることなく近くの相手を昏倒させるくらいわけない。しかし、マノーラ騎士団の方々と入り乱れた中で対象を選び《波動》を放つのは難しい。ゆえに、こうして敵を誘い出した。そして、あとは僕が……。
チカマルは、《
キン、と金属音が鳴る。
これはチカマルの愛刀である業物『
しかしその音は、まったく別の場所から発生する。
マフィアのすぐ右後方から音がして、マフィアが振り返ると、
「今です」
とマノーラ騎士の耳元でささやく声を発生させ、隙ができたところにマノーラ騎士が斬りかかった。
「せ、せいっ!」
「ぐあああ!」
そのあとも、チカマルはたんと足を踏み鳴らし、マフィアの背後で足音を響かせると、またしても「そこです」とマノーラ騎士に声をかけ、それに合わせてマノーラ騎士が剣を振った。
「やああっ!」
「おあっ」
さらに、チカマルは「ふぅー」とマフィアの耳に息を吹きかける音を発生させた。
「ひゃぁあんっ……」
マフィアの力が抜け、チカマルが「トドメを」とマノーラ騎士に声をかけるが、
「え、え?」
突然のことに対応できなかったマノーラ騎士に、マフィアが正気を取り戻して銃を構える。
「あっ、うわあ!」
ギリギリで斬りかかったマノーラ騎士だが、チカマルが見る限り、
――遅い。
先にマフィアの銃弾にやられてしまうだろう。
パン、と柏手を打ち、チカマルはその音をマフィアの目の前に発生させる。急な破裂音に驚いたマフィアに、マノーラ騎士はそのまま剣を振り抜いた。
そして、無事マフィアを斬ったのだった。
チカマルのサポートであっという間にマフィアたちがマノーラ騎士団の剣に倒れ、彼らは捕縛されていった。
マノーラ騎士たちのリーダーらしき男性がオウシとチカマルに礼を述べた。
「ありがとうございました。ご協力感謝します。あなた方は
「積極的参戦ではないが、見つけ次第、じゃ」
そのあとも「助かります」とか「是非お力を貸していただけると助かります」とか言われて、少しだけしゃべり、マノーラ騎士団とはそこで別れる。
オウシは言った。
「チカマル」
「はっ」
「わしらは気ままに参戦するぞ」
「はい。一軍艦の皆様との合流はいかがされますか?」
「適当でよかろう。参戦する以上、それぞれが士衛組と『
「はい。お味方となる士衛組や『
「さて、ミツキはだれと会っているか。どうせなら士衛組と出会ってくれるとよいがのう」
オウシが快く話しているので、チカマルは微笑を携えたまま、
「そちらのほうが都合がよろしいので?」
と尋ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます