56 『イグザットサーチ』
サツキに封筒を送ったのは、
鷹不二氏が編成する鷹不二水軍の一軍艦の操舵手で『運び屋』の異名をとる。
そんなスモモは鷹不二氏の通信役をも担っていた。
ルカやリラからそうした話は聞いていたサツキだったが、その通信方法まで知らなかったし、それがわかった今、素直に驚いていた。
――こうやって手紙を送れるなんて、便利な魔法だ。しかも、一度しか会ったことのない俺にも手紙を送ることができるというのは、この魔法の適用範囲の広さを示している。
送信条件も、相手の名前がわかっていればよいとか、どこにいるかが町単位とかおおざっぱにわかっている程度でよいとか、もしかしたら手紙以外も送りつけることができるとか、非常に都合のよいものである可能性が高い。
改めて、『
――士衛組も、メンバー間だけでいいから、通信能力を向上しないといけないな。
ちょうどルカが考えていたことをサツキも思ったが、サツキが今やるべきは手紙の確認だ。
サツキは内容にザッと目を通し、それを要約してアシュリーに伝える。
「相手は、士衛組と友好関係にある人で、その人は今クコといっしょにいるそうです。話によると、マフィアの襲撃についても知っているようで、クコが遭遇した『洗礼者』ヨセファというシスターが、魔法《
「じゃあ、お兄ちゃんを操っていたのも」
「はい。シスター・ヨセファでしょう。このシスターを逃がしてしまったようですし、彼女には気をつける必要があります。あと、クコがシスターの魔法で赤ちゃんみたいに幼児化してしまったそうです」
「えぇ!? 赤ちゃんって、あの赤ちゃんだよね? 大丈夫かな?」
「どうでしょう……」
大丈夫ではないかもしれないが、ここは差出人・スモモにおもりを任せるしかない。
「とにかく、クコたちは俺かロメオさんを探して、幼児化の魔法を解除することになるようです」
「そっか。グローブで、魔法効果を打ち消せるんだもんね」
「こちらからも探すのは簡単ではありませんが、近くにいたら見逃さないようにしましょう」
「そうだね」
と、ここに。
さらに封筒が現れた。
「同じ柄だよ」
ひらっと風に揺れる封筒を見て、サツキは手袋を外す。
「どうやら追記みたいですね。主に封筒の使い方が書かれています。一度封筒を開けて、また閉じれば、その瞬間に封筒は差出人に戻っていくようです」
「それで返信までできちゃうってことかあ。便利だね」
「この封筒があれば、連携がかなりスムーズになります。さすがは鷹不二氏」
アシュリーは「鷹不二氏?」と思うが、それが「士衛組と友好関係にある人」たちなのであろう。その点には突っ込まず、アシュリーは問うた。
「ねえ、サツキくん。気になってたんだけど、さっきからどうして封筒を開けないで内容がわかるの? 魔法?」
「はい。一応、魔法の詳細は伏せさせてください」
「うん。もちろん。でもすごいね。それでわかるから、魔法を解除するそのグローブをはめた手で封筒に触れなかったんだね。もし触れちゃうと、封筒の魔法効果が消えて、こうやって返信もできなくなるもんね」
「敵だったら魔法効果を消してしまったほうが安全ですけど、味方が特殊な魔法を使ってくれた場合、大事な効果を打ち消してしまうこともありますからね。返信できないだけならいいですが、魔法が消えると共に手紙そのものまで消える可能性もありますから」
だからサツキは封筒に触れず、慎重に見極めたのだ。
手袋を外して、サツキは封筒を開けてアシュリーにも手紙を見せた。そして、返信を書いて封筒を閉じた。
瞬間、パッと封筒がサツキの手から消えて、スモモに届けられたのだった。
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