53 『ホワイトフラッグ』
ルカが対峙するのは、『
サヴェッリ・ファミリーのマフィアであり、魔法《
――『
しかし、それだけであろうはずもない。
――《
さっきも、旗を振ることで《
――白い旗を振ることで《
ルカは慎重に考えてゆく。
――ただ、それも含めて、旗の動きはすべてがフェイクの可能性すらあるのよね。法則を観察させ、こっちがその法則を導き出したところで、旗の動きを囮に攻撃を仕掛ける……そんなやり方だってできるわ。
しかもそれは戦術の一端でしかない。
――そもそも、《
絶対に、ただ水を人型にして動かすだけではないはずなのだ。
――わかっている情報では、《
いくら槍や剣を無効化されたとはいえ、こっちへの攻撃手段がないわけがなく、警戒はしてもしすぎるということはない。
――予想だけど、《
ビーチェが見せた《
情報の開示が相手の行動を縛り婉曲的なコントロールにつながる点など、見せる部分を絞ることでおもしろいように翻弄できる魔法といえた。
だが、ルカが思いつく可能性をすべて包括するほどの魔法でもないと思われる。
「どうしたの? なんにもしないの? 口だけ?」
挑発してくるビーチェ。
ルカは煽り返す。
「少し分析していたのよ。あなたが白旗を振って降参しそうな素振りにも見えたし」
ルカはまだまだ分析が足りないから、実際は口だけの状態なのだが、この手の感情的になりやすそうな相手にはそれで時間が稼げるとわかっていた。
「はい? おまえバカなの? この旗が降参するために持ってるように見える?」
「あら。そのために持参しているなんて用意がいいって、感心していたのだけれど。違うの?」
「ワタシも司令官だし大人だからあんまキレたりするつもりないけどさ、ほとんど無名の弱小組織のガキが調子乗んなよ? おまえが参謀なんて、どんだけ人材不足なんだって話」
イライラしているビーチェの顔と手を観察して、ルカはここからの方向性を定めた。
――顔全体、さらに耳まで赤みが帯びてきている。本当に頭にきている証拠ね。同時に、旗を握る手にも変化が見える。怒りで握りを強くしただけじゃないわ。白い旗を握る左手の握力がより増している上に、手首をやや内に曲げた。これから白い旗を動かす……つまり、旗が《
ルカの分析が少しずつ積み重なっていこうとしているところで、突然、真横に《
しかしそれは、白い旗が振られたのといっしょだった。
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