51 『ケミカルキュア』
ルカは、ヤエに状況を説明しようとした。たまたまこのマノーラに来ていたらしき鷹不二水軍一軍艦だが、今はそれどころではないのだ。
「あの。今、このマノーラの街は大変なことになっています」
「それもお嬢から聞いてるし、大体のことはわかっとーつもりやけん、安心して」
いつどこでどうやって聞いたのだろうか。気になるが、ヤエの言うお嬢――つまり鷹不二氏の姫・
ヤエは言葉を続けた。
「ミツキくんによると、サヴェッリ・ファミリーが襲撃してきてるみたいやし、ここはいっしょに行動せんね?」
「ぜひ。よろしくお願います」
「ありがとう、ルカちゃん」
行動を共にすることになったルカとヤエだが、ルカはヤエの状況についてもまだまだ知りたいことがある。
「私は今、クコとはぐれてしまったところなんですが、ヤエさんはどんな状況ですか?」
「あたしはお嬢といっしょにいたんやけど、空間の入れ替えかなんかが発生してバラバラになっちゃった。お嬢によると、みんなもバラバラ。でも、一軍艦のみんなのことはルカちゃんが心配せんでよかよ」
「みなさん、強そうですもんね」
「そうそう。みんな鷹不二の中でも一軍艦に入るほどだから腕は確かばい。軍医のあたしはそうでもないけど」
と、ヤエは笑う。
しかしヤエは先程見せたように魔法の使用で、まともな戦闘すら回避して相手をダウンさせることさえできるのだ。
「ヤエさんは、注射器で相手の戦意を奪ったり気絶させたりできて、強いと思います」
「ありがとう。まあ、注意を引いてくれる人が側にいればこそやけどね。さっきのもルカちゃんのおかげばい。ただ、お嬢は幼児化したクコちゃんを連れてるっちゃん、戦いはちょっと難しいかも」
予想外の言葉に、ルカは面食らった。
「……え? お嬢って確か、鷹不二氏の姫・スモモさんですよね。クコは幼児化してそのスモモさんのお世話になっているんですか?」
「うん」
ちょっとおかしそうに屈託なく答えるヤエに、ルカは申し訳ない気持ちで、
「すみません。クコがご迷惑をおかけして」
「よかばい。お嬢は通信役やけん、クコちゃんといっしょにいることで戦わずに済めばちょうどよか」
ヤエはルカの顔色を見て、
「特に問題なし。疲れも小さそうやね。ただ、身体中にこりがあるけん、ちょっとおとなしくしててね」
「はい」
と答えてルカがじっとしていると。
注射器がルカの首に刺さった。
「はい。こりを取ったけん、ルカちゃんの動きはよくなるはずばい」
魔法《
「ルカちゃんは身体が緊張しやすい上、常に気を張ってるせいでまたこっちゃうかも。少し楽に構えておいたほうがよかよ」
「本当に肩のこりがなくなりました。ありがとうございます」
気を張ってしまうのはルカ自身もわかっている部分だが、言われてすぐ楽に構えられるほど素直でもない。心も身体も、そう易々と休められる旅ではないのだ。
――楽に構えていられるようになるため、頑張らないと。なんて、それがよくないのかしら。でも、あまり気が抜ける状況でもないのよね、今は。
そう思いながら、ルカは前方に手のひらを向ける。
「《
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