30 『コンタクトネットワーク』
アシュリーのピンチに駆けつけ、助けてくれたのはサツキだった。
振り返ったサツキを見て、アシュリーはたまらず力が抜けてへたり込んでしまった。
「大丈夫ですか? アシュリーさん」
「う、うん。大丈夫だよ。それより、お兄ちゃんがっ」
そう言ってサンティを見るアシュリー。
サツキはそちらに目を移し、
「あれが、サンティさん」
とつぶやく。
マノーラ騎士団たちがサンティに駆けてゆく。
「今だ! マフィアを取り押さえろ!」
状況はまだわからないはずなのだが、サツキはサンティの元と走って行って、マノーラ騎士団たちに手のひらを向けた。
「待ってください」
「あ、あなたは……士衛組の
マノーラ騎士団の一人がそう言うと、サツキは冷静に説明する。
「この人はマフィアに操られていたコロッセオの魔法戦士です。今は気を失っているので、どこか休める場所へ連れて行ってあげてください」
「魔法戦士でしたか! わかりました」
サツキがきびすを返してアシュリーのほうへと戻って行くと、手を差し伸べた。
「あ、ありがとう」
アシュリーは立ち上がって、目に溜まっていた涙を指先で拭い、表情を和らげる。
「サツキくんが来てくれてよかったよ」
「まさかこんな形でお兄さんと遭遇するなんて、驚きましたよね」
「うん。でも、どうしてサツキくんが……あれ? なんだか、景色が変わってるような……」
「空間同士の入れ替えがあったようです。俺も最初は混乱しましたが、リディオから連絡があって状況を理解しました」
「リディオくんって、昨日応援に来てくれた子だよね。電気信号の魔法が使えるって話していた気がする」
「はい。それによって、俺に連絡をくれました」
リディオから連絡が来たとき、サツキはわずかにパチッと電気が頭に触れるのを感じられた。
『サツキ兄ちゃん、リディオだ。聞こえるか?』
と、リディオは話しかけてきた。
「うむ」
『報告するぞ。今、魔法によってマノーラの街の中では空間が入れ替えられているんだ。マノーラの中でもより中心部のほうらしい』
「なるほど」
『敵はマフィア。サヴェッリ・ファミリーってやつらだ。カシリア島のマフィアで、アルブレア王国騎士とか明日の裁判の宗教側も手を組んでいるってレオーネ兄ちゃんが言ってた。そこには失踪事件も関わってる』
「ふむ。状況はわかった。確認だが、失踪した魔法戦士たちの姿は?」
『まだ見られてない。どう利用されるかはわからないな』
「了解。それで、連絡したのはレオーネさんとロメオさんだけか?」
『おう。そうだぞ』
「では、次に連絡するのは『
『そうなのか?』
「士衛組は狙われる立場だ。戦うのは必然となってくる」
それに、士衛組の仲間への信頼もあった。リディオからの連絡が来るまでになにかあっても凌ぎきれるだろう。
サツキは続けて、
「『
『そっか! でも、さすがだな!』
「なにがだ?」
『レオーネ兄ちゃんも、サツキ兄ちゃんなら話してる途中で状況をだいたい理解してくれるし、おれがだれに連絡していくべきかも指示してくれるって言ってたんだ。その通りだった』
「逆に、わかることが限られているおかげだと思う。それより、マノーラ騎士団もそれぞれがバラバラに行動しているだろうから、リディオの知り合い複数人に連絡。その後、士衛組ではまずは副長クコに。俺はリラとはぐれてしまって今一人だから、できればリラにも頼む」
『おう。あとは、だれとだれがいっしょにいるか確認して、みんなと情報を共有するぞ』
「頼む。一応、リディオはラファエルといっしょだな?」
『そうだけど、アキさんとエミさん、ミナト兄ちゃんの三人とはかくれんぼ中にバラバラになっちゃったんだ』
「あの三人なら平気だと思う。アキさんとエミさんも後回しでいい」
『だな! じゃあ、おれはみんなに連絡していくぞ』
よろしく、とサツキが言うと連絡が切れたのだった。
サツキはリディオからの報告によって、鷹不二氏のミツキと同じくらいには状況を理解したので、まずはだれかと合流しようと動いていたのだが。
そこで、アシュリーを見つけたというわけである。
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