28 『ミツキロジック』
「宗教側ってなんです?」
ミナトの疑問に、ミツキは答えてゆく。
「その名の通り、宗教至上主義の方々です。ただし、ここでのそれは地動説反対派の連中。彼らについては汚い噂も聞きますし、マフィアと手を組んだとの話も耳にしたことがあります。サツキさんは裁判官の買収を妨害し、公平な裁判がされるよう尽くしているようですが、それが彼ら宗教側には邪魔でしかないのです。そうなると、士衛組をメインターゲットとする宗教側と『
へえ、とミナトは感心してしまう。サツキがそんな手を打っていたのも初めて知ったが、なによりミツキが少ない情報だけでここまで思考を巡らせていることに驚く。
「ちなみに、サヴェッリ・ファミリーのマノーラ潜伏は少し前からあったことです。失踪事件の始まった時期を合わせれば、元々サヴェッリ・ファミリーはコロッセオの魔法戦士を利用したマノーラ襲撃を計画していた。あとから宗教側がその計画に乗っかったとみるべきですね。そうなると、この両者をつなぐ存在が必要となる。そしてそれは、あなたたち士衛組の敵と考えるのが妥当でしょう」
「え」
そんなところまでわかってくるのかとミナトは目を丸くした。まるでサツキと話しているみたいに、次から次へと思考が形となり読みが深くなる。
――なんだ、この人……。すごいなァ。もしかしたらサツキ以上に頭が切れる。オウシさんにはトウリさんさえいればブレーキは必要ないと思っていたけど、こんな人なら参謀にもするかァ。
オウシもまたサツキ以上に頭が切れる、とミナトは思っている。しかし、ミツキはオウシやサツキともまた別の切れ味があるようだった。
そして当然ながら、鷹不二氏の情報網もすごい。
「あなたたち士衛組の敵、それはおそらくアルブレア王国騎士」
「やはり、そうなりますかァ」
「一軍艦に入った情報でも、アルブレア王国騎士がこの町にも集っているそうです。ブロッキニオ大臣が水面下で様々な国家やら組織と手を結んでいることを思えば、もっとも難なく宗教側とサヴェッリ・ファミリーの橋渡しができる存在になるかと」
「で、あるか。ふむ、そんなところだろう。そうなれば、サヴェッリ・ファミリーとアルブレア王国騎士が裁判を明日に控えた今日を狙って襲ってくるのも納得できる」
ミナトは目を閉じて考える。
「裁判も絡んでいるなら、なぜ襲撃を昨日にしなかったのでしょう? 士衛組の局長・サツキと壱番隊隊長の僕が大会に参加して、士衛組のみんなが応援に行っているその日は、絶好の機会です」
即、ミツキが言った。
「いえ。相手にも多少の情報網はあるはずです。決勝の日は、レオーネさんとロメオさんが会場に来る。あの二人がフリーな日に襲撃は賢くない。士衛組についても、裏を返せば、町に異変があればすぐに動けることを意味する。あとは、昨日も失踪者がいましたよね?」
「なるほど! 参加者の拉致もしたかったんですね!」
「おそらく」
「そうなると、ターゲットが士衛組と『
「はい。おおよそのことはわかりました。だから、アルブレア王国騎士もここに来たんですね」
ミツキが敵の気配を悟り、振り返ろうとする。
しかし、その前に。
カチリと金属音が鳴ると、次にはバタバタと人が倒れる音がした。
「……これは、……お見事です」
あまりの早業に、ミツキは苦笑を漏らした。
――なるほど。この剣の腕は稀代の才。大将がミナトさんを欲するのもわかる。だれもがミナトさんを求めるはずだ。
ミツキは、オウシの宿敵・
だが、このオウシの旧友は士衛組から離れるつもりはないようだった。
――やはり、士衛組とはしかと同盟しておくべきらしい。ミナトさん一人の力だけでも千人力。まさに、一騎当千。サツキさんにも興味が尽きないし、おもしろい組織があったものだ。
オウシもアルブレア王国騎士数人の元へと歩き出したときだった。
――なにかが、起こる……!
突然、ミツキの視界にあった景色がオウシとミナトを取り込んだまま、切り替わってしまった。
「空間そのものに干渉する魔法、か。お二人も無事だといいですが……。まさか、あなたに会うとは思いませんでした。お久しぶりですね」
ミツキは見知った顔を見つけた。
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