27 『ショックウェーブ』

 空間入れ替えが起こる前。

 ミナトは、オウシとミツキに再会した。

 そこで、ミナトたちに迫る敵があった。

 だがそれを、オウシが《波動》ではねのけた。

 オウシが手のひらを向けると衝撃波のようなものが飛び、敵を吹き飛ばしたのである。スーツ姿の彼らは、人数は三人、そのすべてが壁にぶつかり、うち一人がまだ意識を保っている。


「そう、やつが知っているかどうかじゃが……」


 ミツキが三人を観察して、


「どうやら彼らはマフィアのようですね。昨夜、サヴェッリ・ファミリーがマノーラにいるとの情報もありましたし、サヴェッリ・ファミリーの仕業かと」

「で、あるか。では申せ。言い分があれば聞いてやる」


 オウシがマフィアに聞く。

 しかしマフィアはオウシをにらみつけ、


「て、てめえら何者だ! おれは士衛組のそいつをやりにきただけだぜ!」

「なぜじゃ?」

「言えるか!」

「で、あるか。話にならん」


 マフィアの頭に手のひらを当て、ぐいと押す。マフィアの頭は壁にめり込んだ。衝撃波が広がり、マフィアはすっかり気絶してしまった。


「やれやれ。ミナト、こいつらを知ってるか?」

「サヴェッリ・ファミリーねえ。知らないなァ」


 二人を横目に、ミツキが嘆息した。


「大将、旧友との再会を邪魔されてご機嫌ななめなのはわかりますが、私が話を聞けばもう少し事情がわかったものを」

「ふん。雑魚に用はない。どうせなにも知るまい。やつの顔を見ればわかる」

「確かに、命令されてミナトさんを狙っただけのようですが……今のやり取りで少々わかったこともあります」

「え」


 とミナトは驚くが、


「で、あるか。ミツキ、申せ」


 オウシはあごを小さくあげた。

 ミツキは一度ミナトを見て、視線を外してメガネを指先で押さえる。


「彼は、士衛組が狙いだと言った。なぜか。それは、サヴェッリ・ファミリーがどこかの組織とつながっているからです。サヴェッリ・ファミリーそのものが士衛組に恨みを持つ理由はない。しかし、敵と同盟する組織もまた敵」

「だから、士衛組が敵になるわけですか。では、僕ら士衛組が同盟している組織と敵対しているんですね」

「それが『ASTRAアストラ』です。士衛組と『ASTRAアストラ』の同盟は比較的新しい情報ですが、そうは言ってももう一週間も前のことです。そこに付け入って計画を利用するには充分な時間となる」

「計画……? 利用?」


 小首をかしげるミナトに構わず、ミツキは続ける。


「サヴェッリ・ファミリーは『ASTRAアストラ』とは距離を保ってきたが、『ASTRAアストラ』を排除すればイストリア王国本土に進出できる。新興の『ASTRAアストラ』が目障りなのは間違いない。そもそも、『ASTRAアストラ』がマノーラをその管理下に置く前までは、ここを統治していたマフィアとやり合っていたサヴェッリ・ファミリーですからね」

「で?」


 とオウシ。


「はい。そのサヴェッリ・ファミリー、士衛組が『ASTRAアストラ』と同盟関係になったと知り、士衛組を敵視し始めた。ここに付け入って利用を企んだのが、宗教側です」

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