22 『ランドスケープシャッフル』
「!?」
なにかを察したのか、スサノオはどこかに鋭く視線を投げた。
そのとき、地面が割れた。
「サツキ様!」
「リラ!」
手を伸ばす二人だが、その手は空を切った。
そばにいたサツキとリラの間に地割れが起きたかと思うと、空間がミシミシと音を立てて壊れるみたいに、なにかが破裂するような不思議で理解できない現象が起こった。
リラの目の前から、サツキの姿が消えた。
サツキだけじゃない。目の前にあったはずの景色がすべて消えて、別の景色が現れた。
まるで空間そのものが入れ替わったかのようだった。
理解が追いつかず、リラが振り返ると。
庭園には、変わらずリョウメイとスサノオとゲンザブロウがいた。
「今、なにが起こったのでしょう?」
「落ち着きや、リラはん。サツキはんは大丈夫や。きっと」
「でも、いったい……」
「おそらく、空間が切り取られて、入れ替わった。そんなところやろ。厳密には少し違うみたいやけどな」
スサノオが問うた。
「して、リョウメイよ。この状況、余に説明せよ。裏になにがある? 乱闘のうぶ声に耳を傾けていたのだが……。殺伐たる鳴動が迫っているのを感じる。さあ、早う。早う話せ」
「そうどすなぁ。今言うたように、空間入れ替えが起こった。しかしそれだけでもあらへん。意図的にこれを引き起こした人らがおります」
「ええ、それはそうでしょう」
と、ゲンザブロウが冷静に相槌を打つ。
「スサノオはん、先に言っておきます。これから起こる舞台劇は、サツキはんら士衛組と『
「ほう。では、助太刀無用か」
「そうとも言うてはりません。士衛組には、スサノオはんのお友だちのミナトはんもおる」
「いかにも」
「せっかく助太刀するなら、恩を売っておいたほうが折り合いがよろしい」
「馬鹿者ッ! 相手は、ミナトぞ! 恩など関係なく力になることこそ、碓氷の取る道! 違うか」
鋭く言い放つスサノオに、リラはやや気圧される。
だが、リョウメイは飄々と答えてゆく。
「お友だちが困ったら助ける……メンツのほうはそれでよろしい。けれど、ミナトはん個人やなく、士衛組の売られたケンカ。これに口を挟むのは、余計な介入どす。そこに関わるには士衛組との友好関係が欲しいと思いませんか」
「申せ」
スサノオは激情に駆られやすいようでいて、常に冷静なのだ。それをリョウメイはよく理解しており、それでいて本気の逆鱗に触れないすべも心得ている。
「士衛組と友好関係を築くことは、今後の碓氷氏のためにもなります。その足がかりの一つに、リラはんとのつながりがある。また、たった今サツキはんともつながりができました」
「いかにも」
「彼ら士衛組ですが、ほんまに偉材ぞろいでしてなあ。リラはんも優れた芸術家であり、クコはんと二人でアルブレア王国の王女であらせられる。ほかに、かの『万能の天才』がおります」
「ゆえに、友誼を結べと?」
「しかも! あの城那皐はん、この子がそれはもう特異な存在なんどす」
「ほう!」
傲然と見おろすスサノオに、リョウメイは視線をよそに投げて、
「うちらが晴和王国を統一して戦乱に幕を下ろすとすれば、最大の敵は『青き新星』たるあのお方どす。うちが『
「『青き新星』
と、ゲンザブロウが言った。
「いかにもだ、ゲンザブロウ」
そうした国政に関する話を聞いてもよいのものかと、リラはやや困惑した顔でリョウメイを見る。
すると、リョウメイがリラを見返して、それからスサノオに向き直った。
「その鷹不二氏と、士衛組は友好関係に至った。そのきっかけをつくったのがリラはん。ただ、もっとも厄介なのは、アルブレア王国のプリンセス姉妹でもなければ『万能の天才』でもあらへん。城那皐はんやいうことどす」
「どう?」
短い問いに、リョウメイは明言した。
「あれは、いずれ鳳凰になる至上の軍事的才能どす」
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