10 『ネイバーフッドリトルフレンズ』

 九時。

 ミナトはロマンスジーノ城の近所で、子供たちに囲まれていた。

 この近くに住むちびっ子に懐かれてしまい、遊んでやっているのである。もっとも、いっしょになって遊んでいるといったほうがそれらしいが。

 リディオとラファエルも混ざることもあれば、リディオだけが混ざることもあり、今日はリディオとラファエルもいっしょだった。


「次は公園でかくれんぼしようよ」


 男の子が言うと、みんなも賛成した。子供たちは男女どちらも半々くらいにいて、年は七歳から十歳くらいの子が八人ほどになる。


「元気だなァ」


 にこにことミナトが笑っていると、アキとエミが楽しそうに言った。


「それはミナトくんだよ!」

「そうそう! 今朝だってあれだけ激しく修業してたのにね!」

「鬼気迫るっていうか、ピリピリするくらいだった」

「うん、なんか集中力が極限状態のサツキくんみたいな」


 穏やかな笑顔を崩さず、ミナトはゆるやかに答える。


「あはは、そうかなァ。まあ、サツキを見てたら刺激を受けないわけにもいかないんですよ。もう、今そこに……真後ろまでサツキが来ているような、そんな足音が聞こえる気がして」


 パッと、アキとエミが振り返る。


「いないよー」

「足音もしないしね」


 そんなアキとエミに、子供たちが聞く。


「なんのおはなししてるの?」

「追いかけっこ?」

「鬼ごっこみたいなもんさ」


 とミナトが言う。


「ちょっとミナトくん、今からするのはかくれんぼ!」

「今日はあたしたちと遊ぶんだよ?」


 アキとエミが軽やかなステップを踏んで笑いかける。


「ミナトくんもすっかり人気者だね!」

「たった三日でこんなに仲良くなれるなんてすごいよ!」

「いやあ、アキさんとエミさんの人気には負けます。二人はよくこちらで遊んでいたんですか?」


 聞かれて、アキとエミは首をひねる。


「どうだっけ?」

「うーん、前にロマンスジーノ城に来て、そのときお友だちになったけど、何日かしかいなかったもんなあ」

「じゃあみんなとは何日かで仲良くなったんだね」

「たぶん」


 曖昧で適当な答えだが、それにリディオが補足する。


「二人は、会ったその日にはみんなとも友だちになってたぞ」

「リディオとも会った瞬間から意気投合してたしね」


 と、ラファエルが苦笑する。

 それならばアキとエミのほうがすごいと思うミナトであった。


「まいったなあ。お二人は友人を作る天才みたいだ」


 しゃべっている三人に、女の子が声をかける。


「ねえ、早く公園に行こうよ」

「そうだったね」

「おう、行くぞ!」

「わかったよ」


 ラファエルはこうやって子供と遊んでやる印象もなかったが、ミナトが思っている以上に面倒見がよい性格なのかもしれない。

 にこにことラファエルを見るミナトに、ラファエルがちょっと照れたように聞いた。


「な、なに?」

「いやあ、ラファエルくんも面倒見がよくて偉いなあと思ってね」

「別に、そんなことは。ただ、子供たちには子供たちのネットワークがあって、そこでしか引っ掛からない情報もあるんだよ」

「なるほどねえ」


 しゃべっているミナトとラファエルに、アキとエミが声をかける。


「なにしてるの、ミナトくん? 行こーう!」

「ラファエルくんもだよ! レッツゴー!」

「おぉー!」


 アキとエミを先頭に、ミナトと子供たちがそれに続いて歩き出した。

 六歳くらいの女の子がミナトの手を握る。


「ミナトお兄ちゃん」

「なんだい? ロレッタちゃん」


 女の子は夏付合露玲多カプア・ロレッタという名前で、特にミナトのことを気に入っている。ロレッタがミナトを見上げて言った。


「あのね、見つからない場所があるの。教えてあげるね」

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